全 情 報

ID番号 04735
事件名 未払手当金請求事件
いわゆる事件名 林野庁職員事件
争点
事案概要  林野庁職員の昭和五七年度夏期・年末手当に関して労働協約締結後、基準内賃金が改訂された場合に右手当の算定基礎が旧賃金によるべきか新賃金によるべきかが争われた事例。
参照法条 公共企業体等労働関係法2条2項
公共企業体等労働関係法8条
公共企業体等労働関係法16条
公共企業体等労働関係法35条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1989年3月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (行ウ) 81 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1310号148頁/タイムズ715号172頁/訟務月報35巻9号1772頁/労働判例539号60頁
審級関係 控訴審/04911/東京高/平 2. 5.30/平成1年(行コ)45号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 右当事者間に争いのない各事実即ち本件一部改正協約に原告ら主張にかかる遡及規定及び内払規定が存する事実、昭和四五年度以降昭和五六年度まで右協約と同趣旨の協約に基づきいずれも改定後の基準内給与・賃金を基礎として夏期及び年末手当が算定し直され差額が追加支給されている事実、給与法は原告ら主張の形式で規定、運用され、改定後の俸給月額を手当算定の基礎としない場合にはその旨の規定を設けている事実、また昭和五七年度の国有林野事業特別会計において、原告ら主張の予算措置が講じられている事実、夏期及び年末手当につき追加支給されなかつた昭和五八年度については、一部改正協約締結に際し、改定前の基準内給与・賃金を夏期及び年末手当の算定基礎とする旨の書面が作成されている事実に鑑みると、本件においても改定後の基準内給与・賃金を基礎として夏期手当及び年末手当を算定し直し、既支給分との差額を追加支給するのが相当であると考えられなくはない。
 2 しかしながら、原告らは公労法の適用を受ける職員であり、公労法八条によれば、賃金等労働条件に関する事項は、全林野と林野庁当局との間の団体交渉とこれに基づく労働協約によつて決定されるべきものであるから、本件のごとく、基準内給与・賃金が夏期及び年末手当の支給に関する協約の締結日以降に改定された場合において、改定後の基準内給与・賃金を夏期及び年末手当の算出の基礎とするには、その都度その旨の合意即ち改定後の基準内給与・賃金を右各手当の基礎とする旨の合意を必要とするものであるといわなければならない。
 〔中略〕
 そこで、右合意の有無を検討するに、〈証拠略〉によると、公労委は昭和五七年五月八日、林野庁当局と全林野に対し職員の基準内給与・賃金の引上げについてその仲裁裁定を提示したが、政府は当時の国家財政が逼迫していることを考慮し、右裁定は公共企業体等の予算上又は資金上、可能とは断定できないとして、公労法三五条、一六条に基づき、その取扱いについて国会の討議に委ねたこと、国会においても同年九月には政府が「財政非常事態宣言」を発表し、一般職の国家公務員についての人事院給与勧告を凍結する旨の閣議決定がなされる等の状況があつて容易にその動向が決まらず、仲裁裁定を実施することについての見通しがついて林野庁当局と全林野との間でいわゆる配分交渉に入ることができるようになつたのが同年一二月一一日に至つてからであること、そこで、林野庁当局は同日、それまでの事前折衝として継続してきた交渉を公式の配分交渉に切り換えたが、その際全林野に対し、右認定にかかる諸般の情勢に鑑み本年度の夏期及び年末手当の算定基礎となる基準内給与・賃金についてはその改定は行わないこととし、その旨の申入れをしたこと、これに対し全林野執行部は、右の問題については容易に林野庁当局の譲歩を得られそうになく、年末手当については年内支給を前提とした解決が必要と判断し、全国代表者会議の了解を得たうえ改定後の基準内給与・賃金を夏期及び年末手当の算定基礎とする問題についてはさらに要求を続けていくこととし、結局林野庁当局と交渉の結果、同月一三日に夏期及び年末手当の算定基礎となる基準内給与・賃金を改定前のものとするか、改定後のものとするかについては継続協議とすることで合意に達し、同月二〇日に本件一部改正協約を締結するとともに右協約の締結に際し、右継続協議の合意を確認する趣旨で、林野庁当局側専門委員の職員課長と全林野側専門委員の書記長との間で林野庁当局と全林野間の団体交渉に関する協約第一六条に基づき、団体交渉の議事録に代る専門委員会議事録抄が作成されていること、なお、昭和五七年一二月二三日付け及び同月三〇日付けの全林野中央本部発行の全林野新聞において、公労委の仲裁裁定を夏期及び年末手当にはね返さないという当局の提案は継続協議にされたから闘いはこれからである旨の記事が掲載されていること、林野庁当局と全林野との協議は翌五八年二月一七日から同年三月二五日まで四回に亘り続けられたが、全林野が本件各協約により当然差額追給がなされるべきであると主張したのに対し、林野庁当局が追給することについての合意はいまだに成立していないとしてこれを肯んじないで終つたこと、以上の各事実が認められ、〈証拠略〉中右認定に反する部分は措信できない。
 しかして、右認定にかかる事実殊に全林野と林野庁当局との間において昭和五七年一二月二〇日に本件一部改正協約が締結された際、夏期及び年末手当の算定基礎となる基準内給与・賃金を改正前のものとするか改正後のものとするかについて継続協議とする旨の合意が成立し、その旨の専門委員会議事録抄が作成されている事実に徴すると、右協約に前年度までと同趣旨の附則が存したことをもつて、昭和五七年度の夏期及び年末手当の算定の基礎となる基準内給与・賃金を改定後のものとする合意が成立していたとすることはできない。