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ID番号 04753
事件名 賃金仮払仮処分申請事件
いわゆる事件名 横須賀米海軍基地(第三)事件
争点
事案概要  職務についての能力を欠くとして解雇された米軍基地従業員が賃金仮払の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法20条
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 1989年5月9日
裁判所名 横浜地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 163 
裁判結果 却下
出典 労働判例541号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 2 債務者は、債権者が右基本労務契約の不適格解雇事由に該当すると主張し、一件記録によれば、債権者が大学理工学部電気工学科を卒業し、エンジニアリング専門職(電気)でありながら相応の理解力に欠けるところがなくもなく、さらには、勤務に対する意欲、責任感等々にも問題のあることが一応認められるが、未だ債権者との雇用関係を終了させるに足りるだけの前記不適格事由が存するものと認めるに足りる疎明がない。
 3 以上によれば、本件解雇は所定の解雇事由に該当する事実が存しないものであるからその効力を生じ得ないものというべきである。
 よって、本件申請の被保全権利の存在は、これを肯認することができる。
〔解雇-解雇と争訟〕
 2 ところで、賃金仮払仮処分は、労働者に通常の労働者としての一応の生活ができる程度の金額の仮払いを命ずるものであって、それ以上に他の就労中の労働者と同一の生活を保障するものではなく、さらに第一次、第二次仮処分による仮払いを受けている以上これによってもなお通常の労働者としての生活ができない場合でなければさらに第三次の仮処分はその必要性がないものというべきである。
 3 以上によれば、債権者としては、第一次、第二次の仮処分を得て仮払いを受けているものであるから、仮にこれだけはその生活費を賄いきれないとしても、その不足分(多くみても一か月金八万円弱である。)は自らの努力により補填すべきであるということができ、前記のとおりこれが比較的容易であるといえる。
 よって、本件仮処分申請については保全の必要性を認めるに足りる疎明がないものというべきである。