全 情 報

ID番号 04811
事件名 労働契約上権利確認請求事件
いわゆる事件名 西日本放送事件
争点
事案概要  五五歳定年後嘱託として雇用されていた労働者が右雇用を二年間で打ち切られたのに対し、六〇歳まで雇用する旨の組合との合意があった、また六〇歳に至るまで雇用継続を期待するに足る事情が存在したとして使用者に損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 退職 / 定年・再雇用
裁判年月日 1989年12月21日
裁判所名 高松地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 206 
裁判結果 棄却
出典 労働判例561号97頁/労経速報1384号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-定年・再雇用〕
 (二) 定年について、組合結成当時、被告とその従業員との間に何らの合意もなく、また就業規則の定めもなかった。それで、組合は、雇用の安定を求めるため、定年問題について被告と団体交渉を持った。組合は、当初より、厚生年金支給開始年齢の関係等から六〇歳定年制を主張した。これに対し、被告は、五五歳定年を主張した。昭和四〇年五月一日に至って、被告と組合は、「停年は五五歳とする。停年退職後、本人の能力、意欲、健康状態を勘案し、二年契約の嘱託として再雇傭することがある。」とすることを合意し、それを記載した同年四月三〇日付協定書(〈証拠略〉)に調印し、これが同年四月から適用されることになった。右労働協約成立後、五五歳の定年に達した従業員で再雇用を希望した者は、いずれも一年ごとの更新で嘱託として五七歳に達するまで雇用された。
 〔中略〕
 (一〇) ところで、昭和六〇年五月一六日、被告は、組合に対し、前記(二)の定年後の再雇用制度と選択できるものとして、新たな雇用延長制度を提示し、同年四月一日にさかのぼって実施すると通知した。これは、昭和六〇年度以降に五五歳に達する者について、雇用期間を、【1】昭和六〇年度に五五歳に達する者は満五八歳到達日まで、【2】昭和六一年度に五五歳に達する者は満五九歳到達日まで、【3】昭和六二年度以降に五五歳に達する者は満六〇歳到達日まで延長しようとするものであるが、前記(二)の再雇用制度と比べ、賃金等の諸条件で劣るものであった。組合は、この新制度は、従来の労使の交渉経過に反するものとして反発した。なお、原告には、この新制度の選択の余地はなかった。
 〔中略〕
 2 以上の事実が認められるが、右認定の社会的情勢、同業他社の状況、被告と組合との交渉経過、定年後の従業員の具体的な雇用状況等の下では、たとえ原告が五七歳に達した後六〇歳に達するまで被告に雇用してもらえると期待していたとしても、その期待を、法的保護に値するものと肯認することはとうていできず、事実上の希望的な期待にとどまるといわざるを得ない。