全 情 報

ID番号 04817
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 関西中央ソニー販売事件
争点
事案概要  営業社員・A会社特約店担当という新聞の募集広告に応じて採用され、ルートセールス(特約店担当)をやってきた者が地域開発担当に配置転換されたのに対して、以前の営業社員としての地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法3章
民法623条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1989年12月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 2912 
裁判結果 却下
出典 労働判例555号27頁/労経速報1387号19頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 そこで、本件で問題となっている申請人の業務変更の内容をみるに、それは前記認定の通りであって、要するに、従来のルートセールス中心の業務から、ルートセールスの比重が少なくなった反面販売情報、商品カタログ等の発送や販売促進のためのツール作成等の業務が増えたというものであって、確かに業務の形態が変更したことは否定できないけれども、いずれも一般的に営業業務と考えられているものであることに変わりはなく(申請人の所属部署も同じ中央営業所内で旧営業三課から営業二課に変わっただけで営業課であることに変わりはない。)、申請人が主張するような配転命令で問題とされるところの職種の変更とは言えない。のみならず、右業務変更は、時代の変化に対応しうる営業所体制をつくり販売拡充を計るという被申請人会社の合理的な業務上の必要性にもとづくもので、人選も申請人の職歴や能力を考慮した合理的なものと認められるから、本件業務変更命令を労働契約違反ということはできない。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 次に、本件業務変更命令が不当労働行為であり、また、労働基準監督署への申告に対する報復としての不利益取扱であるとする点について検討するに、確かに、疎明資料によれば、申請人が昭和六一年二月ころ労働組合の結成を呼びかける様な行動をとったことや同年四月ころ労働基準監督署に申告した事実が一応認められるけれども、本件業務変更命令は、右に見た通り被申請人会社の業務上の必要性にもとづく合理的なものであり、他に被申請人会社が申請人の右各行為を嫌悪したり、それに対する報復的意図を持ってなしたとする疎明はない。また、申請人は本件業務変更命令によって何ら経済的不利益を受けるものではないこと、また、申請人が言うところの精神的不利益というのも結局右命令に対する主観的な不満を述べるにとどまるものと言うべきであることから、本件業務変更命令をもって不利益取扱と認めることはできない。申請人の主張は、いずれも理由がない。