全 情 報

ID番号 04863
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ヒノヤタクシー事件
争点
事案概要  タクシー運転手に対する営業収入の不良、運転代行をしたこと等を理由とする解雇につき、就業規則所定の解雇事由に該当するまでに至らないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1990年2月1日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 308 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例561号71頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 (四) 以上の事実を勘案すると、たしかに、原告の営収は、全乗務員の平均営収額に比し、長期間にわたって継続的に、相当低く、かつ、被告からの再三の注意にもかかわらず目立った変化がないという勤務状況にあるということはできるものの、その程度は、他にも原告と大差のない従業員があって、本件解雇に際し、被告としても、これを特に取り上げて指摘をすることをしなかった程のものであるし、原告も被告の利益にそれなりに貢献していると見る余地がなくはないものであることを考えると、前認定のような事実をもっていまだ就業規則に定める「著しい」成績の不良があるということはできない。
 〔中略〕
 (三) そして、以上の事実を勘案した場合、原告が運転代行を行い、そのタクシー運賃をAと折半したことは、外形的には被告の業務方針に反するものという余地が全くないわけではないが、昭和六二年七月中旬以降においては、運転代行料金を一切受領せず、タクシー運賃のみを受領することとされていることからして、原告が右運転代行を行ったことにより被告又はその関連会社であるB商事が本来得るべき収入を害したという余地はないし、原告はCを乗車させてタクシーとしての運行を行ったのであるから、本来運賃一万五九五〇円全額を自らの売上となしうるもので、七九五〇円を自らの、残額八〇〇〇円をAの売上とすることによって原告には不当な利益は生じていないこと、原告及びAが前記のとおり乗務記録に記載し結局運賃全額について被告に報告されていること(被告は、タクシー運賃メーター表示どおりの記載ではないとして、前記記載を問題とするが、原告がした「15950(7950)代行」の記載のうち、「15950」の記載はまさにタクシー運賃メーター表示とおりの記載であるし、また「(7950)代行」との記載はやや説明として足りないという余地がないではないものであるが、このような記載がある以上、被告は容易にその趣旨を原告に確認しうるものであって、この記載・報告は問題のないものということができる。)、更に、その方針の変更の周知は不徹底なものであったところ原告は本社配車係員に確認の上行ったものであることからして、右運転代行の事実をもって、会社の業務運営を妨げ又は著しく協力しなかったものということはできないところであるし、「正常な納金」をしなかったということもできない。
 3 したがって、被告が本件解雇の事由として主張するところはいずれも理由がなく、その余の点について検討するまでもなく当事者間には雇用契約関係が存続しているものというべきところ、被告はこれを否認して争っている。