全 情 報

ID番号 04865
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 大栄金属工業所事件
争点
事案概要  出来高給により鋳型の製造に従事していた者が解雇無効を主張したことにつき、会社構内で作業をしていること、会社に不可欠な製品の製造にたずさわっていたこと等により、会社と右の者との間の法的関係は労働契約関係であるとしたが、本人が出社しないことによって契約が終了したものとされた事例。
参照法条 労働基準法11条
民法623条
民法632条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1990年2月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 803 
裁判結果 棄却
出典 労働判例561号65頁/労経速報1403号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
 2(一) 原告とA間の実質的な使用従属関係が存在する場合には、本件契約を労働契約であると解するのが相当であるところ、右実質的な使用従属関係の存否の判断にあたっては、仕事の依頼に対する拒否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、勤務場所及び勤務時間の指定の有無、労務提供の代替性の有無、事業者性の有無、専属性の程度等の諸要素を総合的に検討することが必要である。
 (二) 右認定事実に基づき右諸要素につき検討すると、原告は、B会社の工場責任者が修理を要すると判断して原告の作業場に運び込んだ本件鋳型を修理するものであり、その修理を必要とする鋳型は恒常的に存在し、修理期間を指定されることもあり、原告一人が本件作業に従事していたことからして、原告には仕事の依頼に対する拒否の自由はなかったといえること、原告に対して勤務時間の指定はされていなかったが、仕事量からして原告は毎日早朝から夕方まで右作業に従事していたこと、原告の就労場所は定まっていたこと、本件作業はB会社の事業にとって必要不可欠な作業であり、本件作業がなされないと丸棒の製造に支障がでること、負傷したとき以外は、原告は本件作業を他の者に任せたことはなかったこと、原告は労務を提供するだけで、本件鋳型の修理に要する設備及び電気代等はすべてB会社の負担であり、原告は本件作業により生計を営み、その間他の仕事に従事したことはなく、原告は自己の計算と危険により事業を営む者とはいえないこと、原告は一六年余専属的に右作業に従事してきたこと、報酬は出来高払とされたが、それは能率向上のためであり、報酬額が一般の従業員より高額とは認められず、労務と報酬との対償性が低いとはいえないことからして、原告とA間には実質的な使用従属関係が存在し、本件契約は労働契約であると認定するのが相当である。