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ID番号 04875
事件名 免職処分無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 日本国有鉄道清算事業団事件
争点
事案概要  勤務時間中における無断の職場離脱、上司への暴行等を理由とする懲戒免職処分が有効とされた事例。
参照法条 日本国有鉄道法31条1項
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1990年2月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ネ) 1915 
昭和63年 (ネ) 451 
裁判結果 取消・棄却(上告)
出典 時報1346号152頁/東高民時報41巻1~4号13頁/労働判例558号7頁/法律新聞960号6頁
審級関係 上告審/05485/最高二小/平 2.10.19/平成2年(オ)771号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 6 本件免職処分の当否
 前示二及び三の1ないし5の事実に基づき検討するに、本件非違行為の契機となったのは、A職員の七月七日及び八日の休暇の取扱い問題であるが、これは、B助役が職責上本人の申出を斟酌して決めた勤務割予定表の休暇について、七日の年休を公休に、八日の公休を年休に変更した上八日を出勤日とすることを求めるものであるところ、B助役は、右要求に応じて取扱いを変更すると、職員が一方的に出勤していわゆるブラ日勤を起こす原因ともなりかねないので同要求を容れなかったものであって、もとより相当な措置というべく、同助役が右要求に応じないことには何らの非も認められない。殊に本件非違行為が行われたのは、A職員が当初の勤務割予定表に従って休暇をとった約一か月後のことであって、行為当日においては、右の要求自体が既に不当であったというべきである。そして、非違行為の態様も、如何に自己の職務が閑散であったとしても、勤務時間中上司の許可なく濫りに職場を離れ、他の職員の職場に入り、B助役が執務中にも拘らず長時間に亘って執拗に同人に対し耳元で大声で叫び、つばをかけ、「嘘つき助役」とののしり、果ては足で蹴るという暴行までも加えた所為は、著しく職場の規律を乱すものであって、その違法性は極めて高いものといわざるを得ない。しかも、右行為は、偶発的に発生したものではなく、普段から直属の上司に対し前示4に掲記したような非違行為を繰り返していた被控訴人の勤務態度、性格、意識等のひとつの現れであって、その根は深いものといわざるを得ない。加えて、本件非違行為が行われた当時、控訴人が莫大な累積赤字を抱えその再建策が検討されていたが、控訴人自体の経営のあり方についても世間から批判を浴び、職場規律の確立が叫ばれており、控訴人自身においても厳しい世論の要請の下に従来の悪い慣習を是正し、正常な職場規律を確立すべく努力していた折でもあって、このような時期に行われた被控訴人の非違行為は悪質であると評せざるを得ない。以上の事情に鑑みると、控訴人が被控訴人をその所定の懲戒処分のうち最も重い免職処分(《証拠略》によると、控訴人の就業規則には、懲戒処分として、免職、停職、減給、戒告が定められていることが認められる。)にしたことには正当な理由があり、解雇権の濫用であるということはできない。
 すなわち、本件免職処分は相当である。