全 情 報

ID番号 04904
事件名 雇用関係確認請求事件
いわゆる事件名 読売日本交響楽団事件
争点
事案概要  交響楽団との間で雇用期間二年間の契約を二度締結した後、一年間の契約を締結していたチェロのソリストとしての演奏業務に従事していた演奏家に対する期間満了を理由とする雇止めにつきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法21条
労働基準法14条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
労働契約(民事) / 労働契約の期間
裁判年月日 1990年5月18日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 5194 
裁判結果 棄却
出典 時報1359号147頁/タイムズ737号148頁/労経速報1399号7頁/労働判例563号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約の期間〕
 以上のとおり第一契約は二年間の契約期間の定めがあったが、右は、労働基準法一四条に違反し、同法一三条により一年を超える部分は無効となり、期間は一年に短縮されるのであり、右一年の期間経過後も労働関係が継続している場合には、民法六二九条一項により期間の定めがない契約として継続されているものと解するのが相当である。
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 原告は、第一契約が二年間の期間の定めのある契約であったとしても、第一契約の期間は一年間に短縮され、右期間満了後も労働関係が継続されたことにより期間の定めのない契約になり、その後はその状態が継続し、第二及び第三契約においては単に労働条件の改定がなされたにすぎないと主張する。
 しかし、前記のとおり、第一契約締結後それが漫然と継続されているのではなく、その後に第二及び第三契約が締結されていること、原告と被告との間には、第一契約締結に際し、契約が永続すべきものとして締結された事情は認められないこと、右各契約においては、単に期間についての定めのほかに、原告の職名、年俸、拘束時間、更新意思の通知条項等労働契約の重要な部分についての交渉がなされ、そのうえで書面によって各契約が締結されていること、したがって、単一の契約が継続しているものとはいえないこと、以上の経緯については、原告はこれを明確に認識したうえで契約に臨んでいるものと評価されること等を考え併せると、第一契約が期間の定めのないものとなり、その状態が継続し、第二及び第三契約は単に労働条件を改定したにすぎないものと解することは相当でなく、第二契約が締結されたことにより、第一契約が解消され、第一契約とは異なる内容の契約が新たに締結され、更に、第三契約が締結されたことにより、第二契約(第一契約と同様一年経過後に期間の定めのない契約となった。)が解消され、新たに第二契約とは異なる内容の契約が締結されたものと解するのが相当である。原告の職務内容が第一ないし第三契約を通じて実質的に同一であることは、右認定を妨げるものとならない。
 したがって、原告と被告の契約関係は、第三契約で定められた一年の期間の満了により、終了したものということができる。