全 情 報

ID番号 04923
事件名 雇用関係等不存在確認請求事件
いわゆる事件名 JR東日本事件
争点
事案概要  清算事業団に雇用されている国労組合員につき、JR東日本が雇用契約関係が存在しない旨の確認を求めた事例。
参照法条 労働基準法2章
日本国有鉄道改革法附則2条
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1990年7月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 12628 
裁判結果 却下
出典 時報1370号148頁/労働判例567号38頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
 一 被告らは、本件訴訟において、被告らが原告の社員たる地位を有しないこと及び原告が被告らを採用すべき義務を負担しないことを認め、これを争っていない。それにもかかわらず、なお原告は、確認判決によって除去されるべき現実の危険、不安が存在すると主張するので、この点について検討する。
 原告はまず、労働委員会における救済申立手続において被告らの所属する国労がした主張を捉えて、原告の法律上の地位の不安定が存在するという。しかしながら、原告の指摘する主張の内容は、原告に対して私法上の雇用関係や雇用義務の存在を主張する趣旨であるとは認め難く、他に国労が労働委員会において右の趣旨の主張をしている事実を認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張はその前提を欠き、失当である。
 次に、原告は、国労の一部組合員が社員たる地位を有することの確認請求訴訟を大阪地方裁判所及び京都地方裁判所に提起したこと、また、被告らに係る救済申立てにおける国労代理人弁護士が、千葉地方裁判所における右と同種事件の口頭弁論期日において、新企業体不採用者が現在新企業体に対し雇用関係の存在を主張し得ることは、すべての不採用者に共通する国労の見解であると述べたことを取り上げ、被告らが右国労及び国労組合員の見解に同調している旨主張する。
 しかしながら、国労の一部組合員の見解がどうであれ、被告らがその見解に同調する旨を表明しているものではないし、千葉地方裁判所において原告主張のような代理人の陳述があった事実はこれを認めるに足りる証拠がないだけでなく、仮にそれが認められたとしても、それだけでは国労が原告と被告らの間の私法上の法律関係を主張し、被告らがそれに同調していると認めることはできないから、原告の右主張は本件訴えにつき確認の利益を認める根拠にはならない。
 そうすると、結局、原告と被告らとの間においては、私法上被告らが原告の社員たる地位を有しないこと及び原告が被告らを採用すべき義務を負担しないことについて争いはなく、原告に確認判決によって除去されるべき現実の危険、不安が存在すると認めることはできないから、本件訴えは、確認の利益を欠くというべきである。