全 情 報

ID番号 04926
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 ゴールド・マリタイム事件
争点
事案概要  管理職であった者に対して勤務中の所在不明、無断早退等を理由としてなされた懲戒解雇が裁判上その効力を否定され、復職させることになったが、会社内に配置すべきポストがないとして下請企業への出向を命じたのに対し拒否されたため諭旨解雇された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法625条1項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠
配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の限界
裁判年月日 1990年7月26日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ネ) 2334 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1404号16頁/労働判例572号114頁
審級関係 一審/04043/大阪地/昭63.11.16/昭和61年(ワ)3672号
評釈論文 鈴木銀治郎・経営法曹101号97~106頁1992年10月
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠〕
 改正就業規則において新たに出向に関する規定をもうけたことは、従業員にとって労働条件の不利益な変更にあたるというべきであるとしても、右規定は、労働組合との協議を経て締結された本件労働協約に基づくものであるのみならず、その内容において、出向先を限定し、出向社員の身分、待遇等を明確に定め、これを保証しているなど合理的なものであって、関連企業との提携の強化をはかる必要が増大したことなど控訴人の経営をめぐる諸般の事情を総合すれば、出向に関する改正就業規則及び出向規程の各規定はいずれも有効なものというべきであり、その運用が規定の趣旨に即した合理的なものである限り、従業員の個別の承諾がなくても、控訴人の命令によって従業員に出向義務が生じ、正当な理由がなくこれを拒否することは許されないものと解するのが相当である。
〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の限界〕
 以上1ないし5の事実に前記引用にかかる原判決理由二2で認定の事実(原判決一四枚目裏六行目から一七枚目表二行目まで、但し前記付加訂正後のもの)を総合すると、控訴人のなした本件出向命令には、その業務上の必要性、人選上の合理性があるとは到底認められず、むしろ、協調性を欠き勤務態度が不良で管理職としての適性を欠くと認識していた被控訴人を、出向という手段を利用して控訴人の職場から放逐しようとしたものと推認せざるを得ない。
 なお、控訴人は、当審における主張2において、控訴人とA商会との間には昭和六三年四月以降資本面ないし役員面での提携をはかり、本店所在地をA商会ビル内に移転したことを理由に本件出向命令の合理性、必要性をいうが、本件出向命令発令後三年余を経て生じたこれらの事情によって、その合理性、必要性を根拠づけることは相当ではなく、右主張は失当である。
 そうすると、本件出向命令は業務上の必要があってなされたものではなく、権利の濫用に当たり、同命令は無効というべきである。