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ID番号 04954
事件名 損害賠償慰藉料請求事件
いわゆる事件名 日本鉱業事件
争点
事案概要  交通事故により死亡した者の遺族が労基局より労災保険金を受領した際に、同時に基準局に対し加害者に対する損害賠償請求権を放棄する旨の意思表示を行なっていた場合に、加害者に対する損害賠償請求がいかなる影響を受けるかが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法20条(旧)
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償
労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係
裁判年月日 1951年4月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和24年 (ワ) 1434 
裁判結果 一部認容
出典 タイムズ14号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕
 証人Aの証言(当時の栃木労働基準局労災課長)によると栃木基準局が原告に対し亡B(被害者-筆者註)の本件災害について労災保険金十一万三千八百九十四円及葬祭料金六千八百三十三円四十銭合計金十二万七百二十三円四十銭を原告に支給するに際し前記の如き書面を提出せしめたのは同法第二十条に『政府は補償の原因である事故が第三者の行為に因つて生じた場合に保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、補償を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する』旨規定されてあるので、右の場合政府が更めて第三者に対して有する損害賠償請求権を行使せざるを得ない訳であるので、事務当局としては右の煩を避けるため右保険金受領者をして前記損害賠償請求権を放棄せしめるように実務上の慣例に従つて前記乙第一号証を基準局に提出せしめたものであることが明白である。
〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕
 前敍の労働者災害補償保険法設定の立法の精神をも併せ稽うるときは原告は本件損害賠償請求権の中基準局から支給された労災保険金の金額の限度においてのみ放棄の意思表示をしたものと解するを妥当と考える。前掲の諸証拠中前記認定と牴触する部分は採用しない。しかして右は第三者のためにする契約たる性質を有するものと解すべきであるが、被告会社は本訴において之に対し受益の意思表示をしたから原告の前記請求権の免除は前記労災保険金十一万三千八百九十円の限度において消滅の効果が生じたものと言わねばならない。