全 情 報

ID番号 04961
事件名 行政処分取消請求事件
いわゆる事件名 紀州水産事件
争点
事案概要  労働災害が発生した時点で会社が故意又は重大な過失によって保険料の納付を怠っていたとして給付制限の処分を受けたのに対して会社が右処分を争った事例。
参照法条 労働者災害補償保険法18条(旧)
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 保険料の怠納、労働者側の重過失等による給付制限
裁判年月日 1953年3月16日
裁判所名 和歌山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (行) 2 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集4巻3号78頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-保険料の怠納、労働者側の重過失等による給付制限〕
 原告は御坊労働基準監督署長が右労働者両名に関する保険給付を五割も制限したのは同種の事案と比較し当時の情状よりみて均衡を欠く失当なものであると主張するに対し、被告は労働者災害補償保険法第十八条により保険料怠納中に発生した事故に対する保険給付の額を制限する政府の裁量的行為は自由裁量に属するから右五割の制限は何等裁量権の範囲を逸脱したものとはいい得ず、また失当でもないと主張する。本法は労働者の保険であると同時にその保険給付は労働基準法による使用者の災害補償義務をも免責するので、本条は使用者が自らの故意又は重過失に基く行為によつて不当に利益を得ることを防止しようとする意図の下に設けられたものであるが、本条の発動は使用者の行為を原因として本法の企図する労働者の保護をそれだけ排除するものであり、また、本条によつて給付制限を受けた保険給付の受給者は労働基準法によつて使用者から直接補償を受け得られるとはいうものの、保険料を怠納するが如き使用者に迅速なる直接補償を期待することは困難な場合もあり、更に使用者に補償能力のない場合を考慮に入れるときは本条の適用によつて直接不利益を蒙るものは使用者というよりは寧ろ労働者といわねばならず、他方政府の対使用者の関係としては同法第三十一条第四項により国税滞納処分の例によつて滞納保険料を直接使用者から徴収し得る方途を別に与えられており、且つ同法第一条が本法は労働者の業務上の災害に対して迅速且つ公平なる保護をなすことを目的とする旨を規定した趣旨をも考え合せるときは右第十八条所定の裁量的行為は当然条理上の制約に従うことを要請されているものと解する。