全 情 報

ID番号 05018
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 群馬中央バス事件
争点
事案概要  バス会社の争議行為に前後して起きた同一のバスのブレーキの異常につき同会社の組合役員が組合大会の決議に基づき県陸運事務所に相談をしたことを会社の名誉を損なう行為をしたとして懲戒解雇した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
裁判年月日 1958年2月15日
裁判所名 前橋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (ヨ) 110 
裁判結果 認容
出典 労働民例集9巻1号1頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
 申請人等の本件に関する諸行為が、就業規則第三七条第八号及び第三八条第六号に該当するかどうかについて考え及ぶとき、以上の説示に則して、申請人AがBから本件の二回にわたるブレーキの異状を昭和三二年九月二七日頃聞き、その頃被申請人会社の整備課長Cにその旨を告げ、その調査方を求めたが、同課長としては異状の原因その他について虚実明確でないものとして、何等の措置をも講じないで経過するうち、組合大会が開かれた際、事の経緯がこれに報告され、ついで、その決議に基き、前示のような経過で、申請人AがB労働組合を代表し、被申請人会社に対して監督的地位にある群馬県陸運事務所に前例や処理方法等について相談するにいたつたこと、本件ブレーキの異状発生の原因については、ついに他人をしてこれを首肯せしめるほどに明らかにしえないこと、その他以上に認定した各事実を考え併せると、申請人等の本件に関する諸行為は、幾分事態を紛糾させるだけに終始したきらいがないではないけれども結局、その現われた姿において把握するのほかなく、とすれば前示ブレーキの異状または故障の原因の究明ないし調査に関してとつたものとして、必ずしも不当であつたり、相当性の限界を逸脱しているものというにいたらないのみならず、懲戒解雇によつて従業員たる地位から排除して、申請人両名に対し重大な不利益を課するに相当な程度に、考量すべき事情がなく、重い情状が明らかであるとはにわかになしえない。したがつて、右の諸行為が被申請人会社に不利益に結果したとしても、すでに、これらの点より懲戒解雇の事由としての「会社の名誉を毀損し又は会社に損害を与えた者」に該当するものとは認め得ないといわなければならない。