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ID番号 05042
事件名 遺族補償年金等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 真岡労基署長事件
争点
事案概要  兄(養親)の営む小規模の製材工場で働いている者の送材車修理中の死亡事故につき、遺族補償の請求がなされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法1条
労働者災害補償保険法7条1項1号
体系項目 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 労働者
裁判年月日 1979年7月19日
裁判所名 宇都宮地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (行ウ) 2 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報957号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-労働者〕
 《証拠略》によれば、亡A次は昭和四三年ごろから、B経営の製材工場において製材工として勤務稼働していたことが認められる。
 二 被告の抗弁1の事実のうち、亡A及びその家族がBと同居し、同一の生計を営んでいたとの点を除き、その余の事実及び同2の事実は当事者間に争いがない。
 しかしながら、前顕証拠によれば、C林産はBの経営にかかり、その妻、亡A及びその妻である原告のほか一〇名ぐらいの従業員が勤務稼働するに過ぎない零細な製材工場であり、その対外的業務はもちろんのこと対内的業務の指揮監督はBにおいてこれに当たり、同人が不在のときにはC林産に最も長く勤務しているDが代行するのが常であって、亡Aはその業務につきBに全く従属した関係において他の従業員と変りなく現場作業に従事していたものであること、亡A方では同人の妻である原告も右製材工場に勤務稼働するに至ってから、原告においてその家族の食事の準備をすることが困難となり、亡A及びその家族は相隣接して居住する実兄B宅において食事をともにするに至り、前記のとおり食事代金三万円を毎月支払い、入浴などもともにしていた(この点当事者間に争いがない。)が、亡A及び原告は右製材業に従事した結果、毎月Bから支給される総額金一四万円(前記のとおり亡Aが金一〇万円、原告が四万円)をもって、その家族の生計を維持していたことが認められる。
 三 以上の事実関係を総合すると、亡Aは、B経営の製材業においてBに雇傭され、支配従属関係のもとに労働に従事し、その対価として賃金を得ている労働者とみるべきであり、Bと一体となり事業利益をともにする経営者的立場にあったものとは到底認め難い。更に、亡Aは食費・住居・光熱費などの点において、実兄であり、かつ、養親であるBから応分の援助を受けていたことがうかがわれるが、それはあくまでも便宜上の生活関係であって、亡A及びその家族は本来的にBとは別居し、独立してその生計を維持していたものとみるのが相当であり、亡AはB経営にかかる製材事業における事業専従者とみることはできない。
 なお、Bが昭和四七年度分事業所得確定申告において、亡Aを事業専従者として掲記している(この事実は《証拠略》により認められる。)とか、住民基本台帳、国民健康保険などにおいて、Bと同一世帯員として取り扱われているとかの点は、税務対策などの点もうかがわれ、これらの点をもってしても右認定判断を左右するに足りない。
 したがって、亡Aが労働者とは認められないとして行われた被告の本件処分は違法であるから取消を免れないものというべきである。