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ID番号 05096
事件名 労働保険再審査請求に対する裁決の取消請求事件
いわゆる事件名 土浦労基署長(呉羽プラスチック)事件
争点
事案概要  フイルム原反の製造に従事してきた従業員の肺サルコイドージスが業務に起因するものか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法75条
労働者災害補償保険法7条1項
労働者災害補償保険法13条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1987年1月22日
裁判所名 水戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 10 
裁判結果 棄却
出典 労働判例501号36頁
審級関係 控訴審/05102/東京高/昭62. 6.25/昭和62年(行コ)6号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 (一) 規則別表第一の二第四号2は、塩化ビニル樹脂等の「合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患」を定型的に因果関係があるものとして掲げている。そして、右の「眼粘膜の炎症」又は「気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患」とは、その規定の趣旨に照らし、塩化水素等の合成樹脂熱分解生成物の刺激作用によって眼粘膜又は肺、気管支、咽頭等の気道粘膜に生ずる炎症性疾患をいうものと解するのが相当である。
 しかるところ、サルコイドージスは、前認定のように、多臓器等に類上皮細胞肉芽腫が形成されることを特徴とする全身性の疾患であるから、その病変が眼粘膜や呼吸臓器に発現したものであっても、同表第四号2に掲げる疾患とは明らかに種類、性質を異にするものである。 従って、本件疾病は規則別表第一の二第四号2所定の疾病には該たらないものといわなければならない。
 (二) 規則別表第一の二第四号1に基づき前記告示において労働大臣が指定した単体たる化学物質としての塩化水素(塩酸)に対応する障害は、「皮膚障害、前眼部障害、気道障害又は歯牙酸蝕」であり、右告示における指定の趣旨に徴し、塩化水素の酸化作用による右各器官の直接の障害を主たる障害とするものと解され、本件疾病が該当しないことは明らかである。
 (三) 前記告示において労働大臣が指定した単体たる化学物質としての塩化ビニルにさらされる業務による症状又は障害として定型的に掲げられているのは、「中枢神経性急性刺激症状、皮膚障害、麻酔、レイノー現象、指端骨溶解又は門脈亢進」であって、これらも明らかに性質を異にし、本件疾病は右指定の疾病には該当しないものといわなければならない。
 (四) また本件疾病は、前記のとおり、医学的に原因不明の疾患とされているものであって、(証拠略)によれば、会社工場において原告と同じ作業をしてきた他の従業員らに本件疾病又は類似の疾病が発生した例はないことが認められるところでもあり、原告が塩化水素、塩化ビニルにさらされる業務に従事していたことと本件疾病との因果関係は、証拠上これを認めることはできない。
 このことは、本件フィルム原反原料に含まれる塩化ビニリデンや可塑剤等塩化ビニル以外の物質にさらされる業務に従事していたことと本件疾病との間の因果関係についても同様であり、証拠上これを認めることはできない。
 3 次に規則別表第一の二第五号の「粉じんを飛散する場所における業務」との関係については、同表所定の疾病は、じん肺症又は肺結核等所定のじん肺症との合併症であり、これらに本件疾病が該当しないことは明らかである。
 4 本件疾病の内容は前示のとおりであるから、原告の業務との因果関係は証明されず、従って、規則別表第一の二第四号8及び第九号の関係においても本件疾病は「業務に起因することの明らかな疾病」に該当しないものといわなければならない。