全 情 報

ID番号 05110
事件名 療養補償費等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 大曲労基署長(鈴木林業)事件
争点
事案概要  チエンソーを使用して木材の伐採に従事してきた者の振動病につき療養補償の請求がなされたところ不支給の処分がなされ、右処分取消の訴えが提起された事例。
参照法条 労働基準法75条
労働者災害補償保険法7条1項
労働者災害補償保険法13条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1987年11月30日
裁判所名 秋田地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 4 
裁判結果 認容
出典 訟務月報34巻4号724頁/労働判例510号44頁
審級関係
評釈論文 野間賢・季刊労働法147号202~203頁1988年4月
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 振動病の病相は徐々に進行し、その間の身体への負担、刺激が相当期間経過して後、同病として顕在化し、チェンソーの使用を継続するとともに症状が更に高進悪化するものであり、また、チェンソーの使用時間が長くなればなるほど発症及び症状悪化の危険性が大きくなるものであることは、裁判所に顕著な事実であるところ、原告は昭和四六年当時には既に振動病の特徴とされる手指のしびれ、痛み、頭重感、腰痛等を自覚症状として覚え、その後の症状は一向に消失していなかったというのであって、原告が従事した伐木作業におけるチェンソーの使用時間は昭和四二年から同四九年の間に使用した分が全体の約八割にも上っているのであり、特に昭和四二年から同四六年の間に使用したチェンソーが防振装置のない、重量が一〇キログラムもある機種であり、振動の負担の大きいものであったことや昭和五〇年二月以前において発症した症状の程度内容及び振動病の発症原因等を考え併せると、原告の罹患した振動病は昭和五〇年以前におけるチェンソーと右時点以降のチェンソーの使用がともに原因となって右病態に至ったということができ、しかも前記認定の事実関係を前提とすれば、原告の振動病に対する昭和五〇年二月以前におけるチェンソーの使用による影響の割合は極めて大きいものがあるというべきであり、したがって、仮に昭和五〇年二月以降に原告が従事した伐木作業の作業形態に労働者性が認められないとしても、原告が罹患した振動病と昭和五〇年二月以前における原告のチェンソーの使用との間には相当因果関係があるといわざるをえない。
 そうすると、原告の罹患した前記認定の振動病は「業務上の疾病」に当たるといわなければならず、これが、業務上の事由に起因するものでないとした被告の本件処分は違法というほかない。