全 情 報

ID番号 05163
事件名 行政処分取消請求事件
いわゆる事件名 神戸東労基署長事件
争点
事案概要  警備会社に雇用されて受付け業務を担当していたアルバイト学生が就業時間内に無断で会社所有の自動二輪を無免許で運転中に会社構内の警備区域内で事故死したことにつき業務上か否かが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法1条
労働基準法79条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務中、業務の概念
裁判年月日 1975年5月16日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行ウ) 35 
裁判結果 認容(確定)
出典 訟務月報21巻7号1423頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務中、業務の概念〕
 3 亡Aは、本件災害の当日午前六時から八時まで受付業務の当番に当つていたため、午前六時に三時間の仮眠から起こされ、本件詰所内の清掃作業を命じられたが、右作業は短時間ですみ午前八時の交替時間までに完了すれば足るし、警察官に類似した本件会社の警備員の制服制帽を着用した者が時折巡回するだけでも警備の目的がある程度達せられることなどを考慮し、右制服制帽を着用して、前記警戒網の整備や駐車しようとする自動車の制止などの必要があればこれらをする目的を兼ねて前述のとおりの随時の巡回をする目的で、前記自動二輪車を無免許運転して出発したところ、速度を出し過ぎていたため右折する道路を曲り切れないで急ブレーキもかけられないままコンテナー積シヤシーに激突した。
 〈証拠略〉は、前記証拠に比べたやすく採用できない。又、右の証拠によれば、本件災害の直前に他の警備員が巡回警備を行つており実際には亡Aが警戒網の整備や巡回をする具体的必要性は客観的にはなかつたことが認められるけれども、右事実をもつて前記認定を覆えすことはできない。
 三 以上の事実によれば、亡Aは、その当時において担当中の受付等の業務とは異るが、雇傭主の本件会社のため同人の職務の範囲内である巡回を善意で行う目的で、本件詰所からコンテナー置場附近に赴く途中、本件災害に遇つたものであるから、業務遂行性が認められ、又、本件災害は雇傭主が前記時間帯に限り黙認していた自動二輪車の無免許運転に内在する危険が現実化したものであつて業務起因性が認められるから、亡Aの死亡は業務上のものと解すべきである。