全 情 報

ID番号 05240
事件名 遺族補償葬祭料決定処分取消等請求事件
いわゆる事件名 三本松労働基準監督署長事件
争点
事案概要  原告がその所有の薪材原木を以て薪束製作の作業中に転落死亡した者につき労働基準監督署長および労災補償審査会が原告の労働者の業務上死亡と認定したことを不服として労働基準監督署長および労災補償審査会の災害補償審査決定等の取消を求める訴を提起した事例。
参照法条 労働基準法85条
労働基準法86条
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 使用者の原告適格
裁判年月日 1950年7月24日
裁判所名 高松地
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (行) 13 
昭和25年 (行) 14 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集1巻4号679頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-使用者の原告適格〕
 按ずるに、行政訴訟を提起し自己に有利な本案判決を受けるには、その要件の一つとして、行政官庁によつて国民の権利義務に関し法律上の効果を発生させることを目的とする行為が為されることを要し、仮令行政官庁によつて国民に対する行為が為されても、それが国民の権利義務について法律上の効果の発生をきたすことなく、例へば行政庁の好意的注意、勧告、戒告、希望等であるときはそれに対し、行政訴訟を提起し、その当不当を問題にすることが出来ないものである。今これを本件について見るに、原告の主張は訴外Aが、昭和二十四年一月山林で原告所有の薪材原木を以て薪束製作中誤つて転落死亡したが被告監督署長はAを原告の薪製作の業務に従事する労務者と認め、労働基準法第八十五条に基き原告に対し災害補償費を支給すべき旨決定を為し、これに対し原告は不服につき、被告審査会に不服の申立を為したるに同会に於ても原告の不服申立は認められなかつたが、右両決定は失当につき本訴に於て取消を求むと謂うにあるが、右監督署長及審査会の審査決定は何れも災害補償に関する紛争を出来うる限り簡易迅速に解決せしめる為めに認められた一種の勧告的性質を有するもので、国民の権利義務に法律上の効果を及ぼすものでなく、原告はこれによつて法的拘束を受くるもので無く従つてこれが取消を求むる為め、訴訟を提起する必要もなく又その利益も無いから、本訴請求は爾余の判断を俟づまでも無く失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。