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ID番号 05256
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 国鉄伊万里保線区事件
争点
事案概要  職場離脱を理由とする減給処分につき、現場監督者の調査が不十分で、その事実が証明されていないとして右処分が無効とされ、慰謝料請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項8号
民法709条
民法710条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職場離脱
裁判年月日 1990年3月23日
裁判所名 佐賀地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 93 
裁判結果 一部認容棄却
出典 労働判例561号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職場離脱〕
 6 以上2ないし5を総合して考察すると、
 (1) 本件当日午前一〇時八分ころ及び九分ころ、被告Y1らがク点、a点、及びケ点から作業始点方向を見た際、原告らが東山代駅に停車しない急行の第一列車を待避するためにオ点付近の地面に座っていたとすれば、両者の間には、伐採作業が必要な程度に繁茂していたがその時点では刈りとられていなかったススキ等が存在し、被告Y1らは原告らの姿を認めることができなかった可能性が十分あること
 (2) 原告らが同日午前一〇時九分ころから二〇分ころまでの間作業始点付近で草の伐採作業をしていたとしても、その間被告Y1らはサ点付近で原告らを探していたため、原告らを発見することができなかった可能性があること
 (3) サ点と長浜踏切(ア点)との間の距離は約三〇〇メートルであり、カーブ及びススキ等の存在のためサ点から長浜踏切は見えず、少なくとも同踏切付近に立っている人物の下半身は見えないから、サ点からはその人物の立っている位置を正確に確認することは困難であって、オ点付近で原告らが立ち上がって線路に出た場合、サ点からは長浜踏切付近から出てきたようにも見える可能性があること
 (4) 少なくとも、第一列車が本件当日本件現場を通過したときには原告らは本件当日予定されていた作業区域内にいたこと
 が明らかである。
 そうすると、A証明書並びに被告Y1及び被告Y2の各供述は原告らの本件職場離脱を証明するに足りず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
 三 請求第一項について
 二で述べたとおり、処分事由が認められないから、本件各懲戒処分は無効というべきである。
 〔中略〕
 以上認定したところに加え、B及びCの各証言、原告らの各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、本件は、国鉄民営化をめぐる国鉄当局と国労との厳しい対立を背景とし、第一列車の乗務員の目撃供述等の原告らに有利な証拠があったにもかかわらず、これが十分に検討されないまま被告Y1ら及び被告Y3の前記過失の結果懲戒処分がなされたものであり、前述のとおり本件各懲戒事由が認められない以上、右処分により原告らの名誉が侵害されたことは明らかであって、これに対する慰謝料としては原告らについて各五〇万円が相当である。