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ID番号 05337
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 社団法人日本赤十字社事件
争点
事案概要  解雇の理由を明示されることなく「社業上の都合」によりとして解雇された者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項
裁判年月日 1954年10月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ネ) 15 
裁判結果 控訴棄却
出典 労働民例集5巻6号689頁
審級関係 一審/東京地/   .  ./昭和23年(ワ)4776号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕
 当裁判所は、本件につき一切の訴訟資料に基き更に検討を遂げた結果、次の点を附加する外結局原審と同一の理由を以て控訴人の本件解雇予告並に解雇無効確認の請求はこれを認容し難いものと判定したので、原判決の理由を全部引用する。〔中略〕被控訴人の就業規則第六十一条に解雇の場合、単に「人事委員会の意見を聴くことを要する」とのみあつて、人事委員会の同意若しくは承認を得べきことは規定されていないのであるから、同条の趣旨は被控訴人において職員を解雇するにつき、一応人事委員会の意見を聴いてこれを処分の参考資料とすべきことを定めたに止り、人事委員会の賛成が得られない以上解雇できないとする趣旨ではなく、ひつ竟その意見は被控訴人の解雇権の行使を制限する効力を有しないのであるから、この意味で人事委員会の意見を聴くことは解雇の有効要件をなすものでないと解すべきこと、正に原判決の詳細説示するとおりである。さらに右規程の解釈上一般に職員の解雇はその性質簡易な事件といえず、本件の場合人事委員長A自身も内心簡易な案件に該らないと考えており(原審証人Aの証言参照)、従つて書面表決の方法を取つたのは手続上妥当を欠いたものとしても、結局において被控訴人が人事委員会に対し簡易な要件として書面上の意見表明を求めたのに対し、委員のうちその表決の方法についてもまた事案の内容についても何等反対を唱える者なく(原審証人Bの証言参照)、人事委員会として賛成の意見を表示したのであるから、その意見が人事委員会の意見たることには渝りなく、単に会議を開き議決したものでないとの理由により、人事委員会の意見としての効力を否定さるべきでないといわなければならない。