全 情 報

ID番号 05396
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 横浜技術廠相模本廠事件
争点
事案概要  不当労働行為にあたる第一次解雇をした後、復職命令があっても当然人員整理の対象となるべきことを推量して第二次の整理解雇がなされた場合、労働委員会が第一次解雇につきなした復職等を命ずる救済命令は違法ではないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1964年9月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 59 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集15巻5号1001頁/時報392号70頁/タイムズ169号202頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕
 本件について、これをみると、Aに対してなされた前記第二次の解雇は軍が基地において実施した人員整理の趣旨を体して講じられた措置であり、また、右人員整理は減少した作業量に見合せ、日本人労務者の現在員の職種別に整理人員を指定して行われたことに徴すると、その具体的職務内容を当然の基礎条件としたものと推認されるところ、〔中略〕Aが第一次の本件解雇当時所属した前記作業単位においては、従前同人の担当した器材貸付事務(ローン・クラーク)は右解雇後、事前監査事務(プレエヂター)担当の計理士(但し昭和三十一年五月中、特殊技術者の職種に昇格)Bが兼任し、昭和三十一年一月以降は事前監査事務の補助者として事務員一ないし三名(概ね二名)が配置されたが、軍から前記人員整理の要求がなされる直前の昭和三十三年八月十二日までには右事務員はすべて他の職場に転出し、その後任の補充もなく、結局Bが単独で事前監査に兼ねて器材貸付事務を執り、軍の右要求の直後たる同年九月中にはBが退職し、その後任として庶務主任Cが配置されたこと、これから推して、軍の右要求当時、事前監査及び器材貸付事務についても作業量が減少していたためもしAが本件解雇を受けずに右作業単位に在籍し、器材貸付事務を担当していたとすれば、あるいは事前監査の補助者として配置されていた右事務員と同様、AかBかのいずれかが他の職場に転出させられていたやも計り知れないこと、一方、右作業単位においてAの右解雇後特殊飜訳の職種に在つたのはD一名であるが、同人は完結書類最終整理事務(フアイナル・フアイル・クラーク)を担当し、事前監査及び器材貸付事務とは少くとも直接には関係がなかつたこと、したがつて、また、これから推せば、右作業単位につき軍が特殊飜訳一名を整理人員として提示したのは完結書類最終整理事務の専任担当者を将来必要としない趣旨に出たものと解する余地があることが認められるから、かれこれ考え併せると、相模原労管がAに対する第二次解雇をなすにあたり、その前提条件として推量したように、本件第一次解雇当時職種こそ特殊飜訳であつたが実は器材貸付事務を担当していた同人が、もし右人員整理時在籍したとすれば、当然その対象とされ、右作業単位における特殊飜訳の整理人員としても都合二名の提示がなされたであろうと推断することは、あくまでも仮定論の範囲に止まり、とうてい事物の蓋然性を捉えたものとは解しがたい。さればとて、ほかにはAが基地内の、どのような作業単位に在籍していたとしても、必ず人員整理の対象となつたに違いないと認むべき根拠ないし資料はなにひとつ見出せない。これから、ひるがえつて考えれば、Aが本件第一次解雇を受けた結果、右人員整理当時現実に軍の基地に在籍しなかつたことが、とりもなおさず同人に対する第二次解雇の唯一の理由となつた、右のような単なる仮定的推量を許す因をなしたものと解するほかはないのである。
 果してそうだとすれば、不当労働行為にあたる本件第一次解雇の結果を排除するため、単なる仮定的推量に基づくAに対する第二次解雇の事実を超越して、前記のように職場復帰及び諸給与相当額の支給を命じる趣旨の救済命令を発することは、合目的的見地からも、ゆうに肯定し得るところであつて、本件救済命令に原告主張のような違法があるとはなしがたい。