全 情 報

ID番号 05460
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 広麺商事事件
争点
事案概要  退職金の支払につき、就業規則において懲戒解雇された者には退職金を支給しないとする定めはあるが、懲戒解雇事由が存在するときに支給しないという定めがない場合、懲戒の手続によることなく退職した労働者には、退職後に懲戒事由の存在が明らかになっても、退職金請求権が発生するとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3の2号
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1990年7月27日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 355 
裁判結果 認容(確定)
出典 労働民例集41巻4号618頁/タイムズ767号127頁/労働判例599号80頁/労経速報1459号6頁
審級関係
評釈論文 酒井正史・平成3年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊790〕308~309頁1992年9月
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 退職金請求権が雇用契約から生ずる従業員の基本的な権利であることに鑑みると、その支払を拒めるのは、就業規則に定められた不支給事由が存在する場合に限定されると解するべきである。
 しかるに、
 〔中略〕
 被告の就業規則には、懲戒解雇された者には退職金を支給しない旨の規定が置かれているが、懲戒解雇に該当する事由がある者には退職金を支給しない旨の規定は存在しないことが認められる。そうすると、原告らの退職前の行為に別紙就業規則所定の懲戒解雇事由に該当する事由があったとしても、懲戒解雇の手続を取らないまま(右手続を取ったことについての主張、立証はない。仮に、本訴で懲戒解雇の意思表示をしたとしても、原告らの退職の意思表示が被告に到達した日は、昭和六三年二月九日であって、第三の一の1で述べたとおり、原告ら、被告間の雇用関係は同月二四日に終了しているものであるから、その後に、懲戒解雇の意思表示をしたとしても、懲戒解雇の効果は生じない。)、右事由が存在することのみを理由として退職金の支払を拒むことはできないと解するべきである。