全 情 報

ID番号 05461
事件名 賃金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 近幾保安警備事件
争点
事案概要  地方自治体と、警備を委託された民間会社の従業員との間には、使用従属関係は認められず、雇用契約は成立していないとされた事例。
 公立学校の警備業務を行う会社の従業員につき、労働基準法四一条三号にいう「監視労働」にあたるとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法41条3号
体系項目 労働契約(民事) / 成立
労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 監視・断続労働
裁判年月日 1990年7月31日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ネ) 433 
裁判結果 控訴棄却(確定)
出典 労働民例集41巻4号626頁/労働判例575号53頁/労経速報1420号16頁/判例地方自治82号42頁
審級関係 一審/03816/大阪地/平 1. 2.20/昭和53年(ワ)2302号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
 被控訴人大阪府と控訴人ら警備員とは直接の雇用契約関係になかったのであって、前記引用の原判決の理由二に認定の控訴人ら警備員の業務内容についての事実に鑑みれば、被控訴人大阪府に控訴人ら警備員に対する賃金支払義務を肯定させるほどの支配従属関係があったとは到底いえず、被控訴人大阪府の賃金支払義務を肯定することはできない。なお、巡回パトロールの新設、定年制の問題などについて被控訴人大阪府の意向が控訴人ら警備員の労働条件に影響を及ぼし、かつ本件委託契約代金額が事実上控訴人ら警備員の賃金に影響を及ぼしたことは認められるものの、警備業務の請負という本件委託契約の締結又は履行について契約当事者双方の意向が互いに影響を及ぼすことはその性質上当然のことであって、これを超えた支配従属関係があったとまでは認められず、また、労働の実態として控訴人ら警備員がその業務内容を指示した仕様書に記載されている業務以外の学校業務についても労務を提供していたことが認められるものの、これも本来義務がないことを知ってしていたものであり、実質的に支配従属関係があったとの根拠とはならない。そして、このことは、被控訴人大阪府が地方公共団体であることによって左右されないし、ILO条約又は建築業法の趣旨を考慮してもこれが本件に適用されるとはいえず、右判断を左右するものではない。
〔労働時間-労働時間・休憩・休日の適用除外-監視・断続労働〕
 警備業務という特性から例外はあるものの、通常は、全体の勤務時間内に巡視の占める時間の割合は二割以下であること、外部との連絡、文書の収受、電話電報の処理などの他の業務もその勤務時間中絶え間なくあるわけではないこと、午後一○時から翌日午前六時までは警報機が鳴るといった場合のほか特段業務はなく、その間仮眠が可能であること、盗難又は火災警報機が鳴ることは、誤報が殆んどで、多くても月二回程度であることの各事実を認めることができ、これを覆すに足りる証拠はないところ、以上によれば、本件許可処分当時の本件委託契約による警備業務は身体及び精神の緊張が比較的少ない監視労働にあたるということができ、本件許可処分を違法とする理由はない。控訴人らは、本件警備業務は監視業務に尽きるものではなく、他にも重要な業務があるから控訴人ら警備員は監視に従事する者にはあたらず、また手待時間がなく断続的労働に従事する者でもないから労働基準法四一条三号の除外事由に該当しないと主張するが、監視以外の労働に従事するからといって監視労働に従事する者にあたらないとはいえず、本件警備業務はその全体を観察すれば、前記のとおり監視労働にあたるといってさしつかえない。