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ID番号 05491
事件名 割増賃金等請求控訴事件
いわゆる事件名 高知県観光事件
争点
事案概要  タクシー運転手の賃金を歩合給制とし、所定時間外労働および深夜労働についての割増賃金が右歩合給に含まれているが、割増賃金部分が明白でない場合にその不足額を認定した事例。
参照法条 労働基準法37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外労働、保障協定・規定
裁判年月日 1990年10月30日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ネ) 266 
裁判結果 一部認容,一部棄却(上告)
出典 労働民例集41巻5号893頁
審級関係 一審/05279/高知地/平 1. 8.10/昭和62年(ワ)666号
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定方法〕
〔労働時間-時間外・休日労働-時間外労働、保障協定・規定〕
 (一)各被控訴人の月間労働時間は、前記説示に従い各被控訴人のタコメーターの記載から読み取った概数の月間平均値によると、別紙〔以下略〕一ないし五の各2認定(各被控訴人分)の所定内(A欄)、所定外(B欄)、深夜(C欄)各労働時間及びこれらを月間の所定内労働時間に換算した数値(D欄)の各該当欄記載のとおりである(但し、変形労働時間に準じて出勤した者の取扱は、午前八時以前出勤の場合午前八時までの時間は所定外とし、午前八時以後に出勤した場合それより遅れた時間だけ、午後五時から午後一○時までの就労時間の内から所定内に繰り込み、所定内は原則として八時間になるように計算し、午後一○時以後就労している場合は常にそれより午前二時までの時間を所定外深夜労働時間とし、午前二時以後は就労していても、前記説示の点から就労しない場合と同視してこれを零と計算した。)。月間に支払われるべき賃金額(F欄)は各被控訴人につき各該当欄記載のとおりである。
 (二) 各被控訴人と控訴人会社との間の個別の労働契約で定めた賃金は各月間水揚高につき試用期間中○.四二、正社員期間○.四五、指名者期間○.四六を乗じた額であり、その中には(全部かどうかは暫く置いて)幾分かの割合による割増金が含まれており(観光労組との協定の際そのことが議題となり、観光労組もそれを原則として肯定していた。)、各被控訴人が控訴人会社から各主張の期間中の賃金として右賃金比率による賃金の支払を受けている(この事実は争いがない。)。
 (三) 割増賃金が既に支払った賃金の一部に含まれているものとしてその割増賃金の不足額(I欄)、割増賃金不足合計額(K欄)はそれぞれ右認定表の計算により算定できる。
 以上のとおり認められる。もっとも、
 (1) 右計算の基礎となった水揚高、総労働時間には前記違法とした午前二時以後の労働時間のものも含まれているが、本件で争いとなった全期間の右説示の基準に従った適法な労働時間、水揚高に限定するとそれを確定することのできる証拠がなく、当事者間に争いのない算定額によるほか適切な方法がないので、これによることとした。
 (2) 右認定に反する甲第一、第三、第七ないし第九号証の各一、二(各被控訴人の昭和六一年分、昭和六二年分賃金台帳)の支払金額の記載は、前記説示と異なり休憩時間を除く全ての就労時間を適法な労働時間とし、所定内、所定外、深夜の各時間の区別につき、観光労組員の場合に準じて処理しているが、その取扱は前記各説示に反する点で違法であるから、その計算額は採用しない。
 他に右認定を左右する証拠はない。
 四1 従って、各被控訴人の本訴請求中割増賃金は、控訴人会社に対し、被控訴人Y1が三一万二四七七円、同Y2が五万三一七六円、同Y3が八万二八四二円、同Y4が三七万三二九四円、同Y5が一二万二一六一円、及び各金員に対する履行遅滞後の昭和六三年一月二二日(本件訴状送達の翌日であることは記録上明らかである。)から各支払済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。