全 情 報

ID番号 05496
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 国際教育振興会事件
争点
事案概要  担当時間数に応じて賃金が支払われていた外国人英会話教師が、賃金、賞与、退職金に未払があるとして右各未払分等を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 仕事の不賦与と賃金
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
裁判年月日 1990年11月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 6237 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例574号9頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-債務の本旨に従った労務の提供〕
 原告が金曜日の夜の授業を止めたい旨申し入れたのに対し、被告は、火曜日及び水曜日も含めすべての夜の授業から原告を外す旨を逆に申し入れたが、いずれの申入れについても意思の合致がみられなかったもので、昭和六三年一月以降労働時間を削減する旨の合意は成立しなかったというべきである。しかしながら、昭和六三年一月以降の金曜日の夜の授業については、原告は被告に対して労務を提供する意思がないことを被告に表明し、現に授業をしなかったものであるから、被告の受領拒否を問題にするまでもなく、原告の労働時間から除外すべきである。そして、火曜日及び水曜日の夜については、原告には労務提供の意思があったが、被告がその受領を拒否することが明らかであったと認められるから、原告が現実に授業を行おうとしなかったとしても、労務の提供があったものとみるべきである。
〔賃金-賃金請求権の発生-仕事の不賦与と賃金〕
 被告が賃金の支払をしない六五時間の労働時間のうち、金曜日の分合計三○時間については労働時間から除くべきであるから(なお、原告は、〈証拠略〉、昭和六三年一月八日の金曜日の有給休暇を昭和六二年七月一日に申請していたものであるが、金曜日の授業を止める旨申し入れたことによりこの申請を撤回したというべきである。)、賃金請求権は発生しないが、その余の三五時間については、原告の労務の受領拒否があったものとして賃金請求権を認めるべきである。そうすると、原告の請求は、一三万七三○五円(三七二三円×三五時間)の限度で理由がある。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 原告の慰藉料の請求は、その法律上の根拠が明確でないが、結局のところ被告が原告に就労させずにその賃金等の債務の履行を怠ったことを理由とするものである。そうすると、原告の請求が債務不履行に基づくものとすれば、右のような金銭債務の不履行を理由として精神的損害の賠償を請求することは許されないし、不法行為を根拠とするのであれば、就労させないこと自体は特段の事情のない限り違法性がないと解すべきであるから、原告主張の被告の行為は不法行為を構成するものではないというべきである。したがって、右請求は理由がない。