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ID番号 05511
事件名 慰藉料請求控訴事件
いわゆる事件名 国鉄鷹取工場事件
争点
事案概要  国労の組合員のみが「特別安全教育」の受講を命じられ、その一部に、文鎮・メダル磨き、電線の被覆除去等の軽作業があつたことにつき、右業務命令が違法な命令であるとして慰謝料を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1991年1月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ネ) 1171 
裁判結果 棄却
出典 労働判例581号12頁
審級関係 一審/04759/神戸地/平 1. 5.25/昭和61年(ワ)664号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 当裁判所も、原審と同様に、控訴人らの本訴請求はこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は、左記のとおり訂正、付加するほか、原判決の理由説示と同じであるから、これを引用する。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 右で認定した本件特安教育実施に至る経緯、その目的、講義の内容、受講者の選定方法、本件軽作業の実施目的、作業環境、作業管理体制及び作業内容等並びに以下で認定・説示するところを総合すると、控訴人らに対する本件軽作業就業命令は、労働者の安全と健康を確保すべき事業者の措置として、必要性及び合理性を有するものであり、業務命令の裁量の範囲を著しく逸脱したものと認められないのはもとより、本件軽作業が、憲法一八条で禁止される苦役に当たるとは到底認められない。
 控訴人らは、本件特安教育受講者が国労組合員のみであり、同組合員をねらい打ちしてなされた旨、主張するけれども、原審における被告Y本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、鷹取工場の技術職員約一二六〇人中一一六〇人以上が国労組合員であることが認められるのであり、その比率からすると、本件特安教育の初期において国労組合員以外の者が受講者に指定されなかったことが、必ずしも不合理とはいえない。また、控訴人らは、右受講者として、国労組合役員をねらい打ちにしたとも主張するところ、
 〔中略〕
 右受講者の選定基準として重視されるべき、過去五年間の傷害の有無と右受講の関係を、昭和六〇年度の鷹取工場支部及び電車分会における職員及び国労組合役員についてみると、全役員一一人中右傷害歴のない者五人は、いずれも受講者とされておらず、控訴人Xと共に右傷害件数が二件である執行委員Aが右選定の対象からはずれているのは、当時繁忙であった艤装班長としての職にあったためであること、電車職場職員で右傷害歴を有する者二八人を、役員(六人)とそうでない者ら(二二人)とに分けて受講者の割合をみると、役員六人中四人が受講している一方、そうでない者二二人中一四人が受講しており、両グループ間に有意の差を見出し得ないことが認められ、右事実によると、控訴人らのこの点に関する主張は失当に帰する。