全 情 報

ID番号 05574
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ソニー・コンスーマー・マーケッティング事件
争点
事案概要  家電製品の販売業務に従事してきた労働者が、時間外勤務手当てについて労基監督署に申告したことを理由として給与の昇給率および賞与の査定につき不利益に取り扱われたとして損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法3章
労働基準法104条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
監督機関(民事) / 監督機関に対する申告と監督義務
裁判年月日 1991年7月16日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 11523 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1437号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
〔監督機関-監督機関に対する申告と監督義務〕
 (2) 右事実によれば、確かに、原告の本件申告に基づき労働基準監督署の監督官の調査が行われた昭和六一年四月二二日以後は、それ以前に比べて昇給率及び支給率の指数が低下していることが認められる。
 2 そこで、右指数の低下と本件申告との間に相当因果関係が認められるか否かにつき判断する。
 (1) まず、昇給率について見るに、指数は別として、人事査定ランクそれ自体は本件申告の前後を通じて同一であることが認められる。右ランク自体が同一であるのに指数に差が生じた原因については、昭和六一年四月の昇給期以後、A株式会社及び旧会社において昇給率の算定方法(具体的には個人の査定が昇給率に与える影響)に変更が生じ、右各会社において施行されている職能格制度(職位とは異なる試験による昇給制度)で昇進した従業員に有利な算定方法が導入した結果であることが認められる
 〔中略〕。
 なお、原告は、
 〔中略〕
 (報告書)において、右昇給率の算定方法の変更は原告の昇給率を低下させる目的で導入された旨を述べるが、これを認めるに足りる証拠はない。
 さらに、A株式会社が本件申告を知った後に行われたと認められる昭和六一年四月期の人事査定ランクが昭和五九年以降では最も上位のBダッシュと評価されていることをも併せ考えると、昇給率の査定において、原告が本件申告を行ったことを理由に不利益に取り扱われたとは認められない。
 (2) 次に、賞与の支給率について見るに、これについては、昭和六一年冬を境に指数及び査定ランクのいずれもが低下していることが認められる。
 しかし、原告は、昭和六一年四月二一日以降において、A株式会社を被告とする時間外割増賃金請求事件を提起していること(当庁昭和六一年ワ第七一六二号事件~平成二年九月二八日上告棄却判決により原告の敗訴が確定)、右訴訟提起以降は、残業拒否をつづけていること、平成元年には旧会社を被告として業務内容変更命令の効力を争う仮処分事件を提起(当庁平成元年ヨ第二九一二号地位確認保全仮処分申請事件~同年一二月二七日却下決定)していること、さらに、昭和六〇年以降は前記職能格に関する社内試験を受験することを、右試験に合格すると管理職に登用され残業拒否ができなくなることを理由に、旧会社において唯一人拒否していることが認められ(証拠略)、旧会社が支給率の決定において右各事実を原告に不利に評価したであろうことは想像に難くないこと(なお、右各事実を不利に評価することの当否は本件における争点ではない)、さらに賞与支給率の決定に際し基礎資料となっている「業績評定書」においても、右評定書に掲げられている仕事内容、態度、成果の各項目において芳しくない評価を受けていることが認められ
 〔中略〕、
 右評価が事実と著しく相違すると認めるに足りる証拠もないことを併せ考えると、昭和六一年冬期からの原告に対する賞与支給率の低下が本件申告を原因とする不利益取扱の結果であるとまでは認めるに足りない。