全 情 報

ID番号 05654
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 トンネル掘削工事事件
争点
事案概要  トンネル掘削工事の土砂岩石搬出作業中の作業員の事故につき会社に対し民法七一七条に基づき損害賠償が請求された事例。
参照法条 民法717条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1971年7月21日
裁判所名 福岡地直方支
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 44 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ269号279頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 原告は本件工作物に岩石が噛み合つた場合、熊手型の蓋を開閉してトラフに振動を与え、又鉄棒を使用してこねあげる作業をしていたが、日頃の作業態度は鉄棒使用に必要以上に自信を持ち、鉄棒を岩石噛み合い部分に突込んでも流出しないときは、トラック荷台内に入つて力いつぱい掛声をかけて岩石をこねあげて作業し、事故発生まで一度も爆薬による破砕を依頼したこともなく、又熊手形の蓋も開いたままの状態で作業していたため、こね上げ作業によつて急激に岩石がトラック荷台に流出して鉄棒が流出岩石内に埋まる場合すらあつたが、本件事故発生当日も原告はトラック荷台内に立ち、ホッパ口右側横のトラフの横壁の下方から約二メートル上方の噛み合い部分に上に向つて鉄棒を突き込む作業をしている中急激に流出した岩石が鉄棒をはね上げて本件事故発生に至つたものと認められ、日頃の作業態度からして事故発生当日も熊手形の蓋は開いたまま、又可成り無理な作業をしていたものと推測される。
 右事実によると本件事故は、原告としてはトラック荷台の上から安全作業すべきであり又それでも流出しないときは爆発物による破砕を依頼するなど作業上当然配慮すべき注意を怠り、あえて危険をかえりみずトラック荷台内に入り、熊手形の蓋もせぬまま作業をしたため流出岩石がトラック内に急激に流出し、そのため鉄棒に強い衝激を与え、附近にいた原告が傷害を負うに至つたもので、原告の一方的過失によつて本件事故発生に至つたものであつて、本件工作物に瑕疵があつたために本件事故発生に至つたものとは認められない。