全 情 報

ID番号 05669
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 合資会社斉藤工業所事件
争点
事案概要  日雇として一カ月以上季節的業務に使用された労働者が、予告なしに解雇されたとして解雇予告手当を請求した事例。
参照法条 労働基準法20条1項
労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告と短期契約
解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 天災事変
解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当請求権
裁判年月日 1949年3月24日
裁判所名 鶴岡簡
裁判形式 判決
事件番号 昭和23年 (ハ) 3 12 
昭和23年 (ハ) 14 17 
裁判結果 認容
出典 労働民例集3号105頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇予告と短期契約〕
 季節的業務であるにせよ労働基準法第二十一条によつて同法第二十条の適用が排除せられる場合は単にそれが季節的業務であることのみを以て足りるのではなく、其期間内に四ケ月以内の期間を定めて雇傭された場合であることを要するのである。それでは本件においては斯る雇傭期間の定めがあつたかというに、被告は排砂門工事が完成又は中止される迄の不確定期間使用したものであると主張するが、〔中略〕原告等が雇傭されるにあたつては何等期間については定めがなく、日々雇入られたものであり其の後三月下旬四月の農繁期になつても継続使用せられることの話合があつたことが認められる。従つて被告の本件の即時解雇措置は失当であつてこの点に関する被告の抗弁は採用し難い。
〔解雇-解雇予告と除外認定-天災事変〕
 昭和二十三年三月三十一日頃には相当の増水はあつたがこれがため残工事の大部分が継続不可能となつた事実は認め難い(証人A、Bは増水は工事中止の第二次的な原因と述べている)。又他の証人の証言を綜合してもこれを覆すに足りない。仮りに右三月三十一日頃には増水のため大部分の工事の継続が不可能の状態にあつたとしても被告は毎年三月下旬には増水期となり工事の継続が不可能となるので、本件工事はそれ迄の期間中に行われるところの季節的業務であると主張しているし、又証人Cの証言によれば同人は三月三十一日頃になれば融雪の増水で工事の継続が困難になることの状態を予測していたことが認められる。即被告は三月下旬頃になれば増水のため工事の継続が不可能になることを予測していたものといわなければならない。労働基準法第二十条但書のやむを得ない事由とは不慮の事故発生によつて予告なしに解雇することが止むを得ない場合を云うのであつて、本件の如く使用者に於て斯る事故の発生を予測し得る状態にあつた場合は本条の止むを得ない事由に該当しないものと解すべきである。更らに又、斯る場合に該当するとしても斯る事由に基いて労働者を即時解雇するには、同法第二十条第三項同第十九条第二項同施行規則第七条によつて所轄労働基準監督署長の認定を受けなければならないのであつて、其の認定が解雇の効力発生要件と解すべきである。
〔解雇-解雇予告手当-解雇予告手当請求権〕
 以上の如く被告の抗弁はいづれも採用し難く、従つて被告が原告等を何等の予告なしに解雇したことは失当であるから被告は原告等に対し三十日分の平均賃金支払の義務があるものといわなければならない。