全 情 報

ID番号 05724
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 朝日自動車事件
争点
事案概要  仮眠室で宿泊中に酔って放尿したことなどを理由とするタクシー運転手に対する予告解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1990年11月28日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 4501 
裁判結果 認容
出典 労働判例576号35頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 争いのない事実、右一1ないし4認定の事実によれば、原告は被告が従業員のために用意した仮眠室で少なくとも三回放尿し、同寮(ママ)等に迷惑をかけたのであるから、被告が原告を「従業員として適さない」と認め、本件解雇をしたことには一応の理由が窺われ、しかも原告は被告のロッカーの鍵を破損したうえ、相当回数の無断欠勤・未収金があり、営業収入も平均より低いこと等が認められるけれども、他方、原告は本件解雇まで大過なく九年余りにわたり被告タクシー運転手として稼働してきた者であること、原告の右放尿行為は意識的な放尿とは認め難いうえ、西基地内の行為ではあるが就業時間外の行為であり、これにより業務成績が低下した事実もないから、必ずしも悪質とまではいえないこと、仮眠室は従業員の便宜のために設置されたもので、業務上宿泊が義務づけられていないから、被告が原告の仮眠室の使用を禁止すれば、原告の放尿問題を容易に解決できること(就業規則二三条は、酒気を帯び他人に迷惑をかける虞のあるもの〔一項〕、風紀秩序を乱し、又は衛生上有害と認めるもの〔二項〕を入場させないことがあり、退場させることがある旨を規定しているのであるから、原告の放尿が改善されるまでの間、右規定により仮眠室への入場を制限することによっても十分に対処できた)、原告は最終的に自己の放尿の事実を認め、A、被告に陳謝し、事情聴取の際には仮眠室を使用しない旨を申し入れたが、被告は右処置を講じることなく直ちに本件解雇に及んでいること、原告の無断欠勤は昭和五八年当時のものにすぎないし、未収金による被告の損害はなく、少なくとも本件解雇直前の数か月間は原告の未収金は殆どなかったこと、原告よりも営業成績の低い者が相当数存在するが、被告は従来、営業成績を理由に解雇した例はないこと、原告が七九番のロッカーも使用するに至った経緯(自殺者のロッカーで不使用放置)、同鍵の損壊の経過(修理の事実を不知、故障等と判断)、態様(素手で牽引)等は必ずしも悪質とはいえないのに対し、被告では従業員がロッカーの鍵をドライバー等で故意に損壊する悪質な事例さえあるが、従来被告は調査・処分をしていないこと等が認められ、これらの事情を総合勘案すれば、本件解雇は客観的合理性を欠いており、社会的に相当なものとして是認することはできないから、権利の濫用として無効であるといわねばならない。