全 情 報

ID番号 05742
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 東京都北区学校警備職員事件
争点
事案概要  公立学校の警備職員が、休日勤務の廃止に反対して休日に強行就労してその期間についての賃金を請求した事例。
参照法条 地方公務員法57条
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生
裁判年月日 1990年12月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行ウ) 179 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1416号20頁/労働判例578号52頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生〕
 原告らは地方公務員法五七条に規定する、いわゆる単純労務職員であり、その勤務条件は法律、条例、規則、規程により定まるものであり、そもそも当事者間の合意や慣行により定まるものではない。「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」八条、同施行規則五条三項、同規程七条一項別表によれば、原告らの学校警備職員についても休日が定められており(証拠略)、勤務命令がない限り休日勤務する義務のないことは明らかである。
 なるほど、原告らが採用されるときに、当局から休日勤務があることの説明を受けたこと、職場の学校長等から個別に勤務命令を受けることなく休日勤務に原告らが従事してきたことは認められるが(原告X、証人A)、これは各休日の前に個別に勤務命令がなくとも勤務命令があったものとして休日勤務をすることになっていたという意味では休日勤務をすることが慣行になっていたといってもよいけれども、このことから休日勤務をすることが原告らの勤務条件の内容になっていたとは認められない。
 休日勤務の廃止が権利の濫用になるかについて判断する。
 個別に勤務命令がなくとも休日勤務をすることが慣行になっていたということは、あくまでも勤務命令を不要ならしめるまでの効果を持つものではなく、単に勤務命令の黙示の発令があったものとするとの意味を持つに過ぎないから、この慣行が存在したとしても、勤務命令の黙示の発令としての意味を持つにすぎない以上、命令権者がこれと異なる命令をすることを妨げるものではなく、命令権者が勤務を要しない意思を表明したときには、右意思が優先することはいうまでもない。原告らは、被告がなした休日勤務の廃止は権利の濫用であると主張するけれども、この廃止は平成元年四月以降は休日勤務命令を出さないということを事実上表明したものにすぎないのであって、これが権利の濫用になるとはそもそも解されない。
 原告らの本件休日就労は、被告の勤務命令に基づくものではなく、賃金請求権は発生しないから、原告らの本件請求は理由がない。