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ID番号 05766
事件名 年金受給権確認請求事件
いわゆる事件名 名古屋学院事件
争点
事案概要  私立学校の年金規程に基づく職員の年金制度を廃止し、一定の時点で退職したものとして年金一時金を算出し、退職時に返還する旨の就業規則の改訂の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
労働基準法93条
労働基準法11条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 退職金
賃金(民事) / 退職金 / 退職金の法的性質
裁判年月日 1991年5月31日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 3007 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集42巻3号415頁/タイムズ769号146頁/労働判例592号46頁/労経速報1445号5頁
審級関係
評釈論文 片桐由喜・賃金と社会保障1088号46~50頁1992年8月25日
判決理由 〔賃金-退職金-退職金の法的性質〕
 被告学院においては退職金についても昭和五〇年度までは被告学院の経常収支から分離された基金を設けていたことを認めることができるのであり、会計処理上独立の特別会計を設けているからといって直ちに独立の年金契約と結び付くものではない。また、支給年金に職員の拠出分が含まれていること、支給条件が明確化されていて功労報償的性格が希薄であることも、本件年金規程に基づく年金受給権の権利性の強さを示すものではあるが、このこともまた、必ずしも独立の年金契約と結びつくものではない。むしろ、先に認定したとおり、本件年金規程に基づく年金は、被告学院に満二〇年以上勤続した者が退職し又は在職中死亡することにより支払われるものであり、また本件年金規程第三条但書によれば、年金資金からの年金支払が不能になった場合は被告学院が無限定の支払責任を負うものとされていることに鑑みると、本件年金規程に基づく年金は、過去の労働との関連において支払われる点で退職一時金と同様の性格を有するものといわなければならない。
 したがって、本件年金規程に基づく年金受給権は独立の年金契約によって発生するものと解することはできず、労働契約においてその内容の一部として合意されたことにより発生するものと解するのが相当であり、かつそれは基本的に労働力の提供と対価関係に立つものであるから、労働条件の一つと解するのが相当である。なお、原本の存在及び成立に争いのない甲第六五号証によれば、協議会から被告学院に対する昭和五三年二月二一日付け申入書に「この制度は教職員を採用するとき『Y学院には年金制度もありますから……』と雇用契約の一つとして約束がなされてきたものであり」との記載があり、被告学院の職員自身本件年金制度を労働条件として認識していたことが認められる。