全 情 報

ID番号 05835
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本クレー射撃協会事件
争点
事案概要  A協会の従業員が勤務態度不良、執行部に対する造反等を理由に解雇されその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1991年12月17日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成3年 (ヨ) 2203 
裁判結果 一部認容,一部却下
出典 労働判例600号41頁/労経速報1461号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 債務者は、債権者に「職務上の地位を利用し、債務者関係者、関係業者からの利益を図るがごとき行為」があったと主張する。右主張は、その主張の趣旨自体からして、債権者に自己の利益を図った行為があったと確定的に主張するものではないようであって、単にそのように見られかねない行為、あるいは、そのように噂されかねない行為があったという程度の趣旨のようである。しかも、装弾業者と結託して公認装弾を自己の職務外で勝手に海外に持ち出し、外国で使用テストを行ったという事実を一応認めるに足りる疎明はなく、また、債務者は、「公益法人の事務局職員である以上、癒着などという噂のたたないように平素から心掛けるべきであるのに、『自らの職務上の地位を利用して、一部の強化委員会委員から乗用車を譲り受けたり、欧州旅行への招待を受けたりしている』などという噂を招いた。」と主張するが、あくまで右は噂というだけであり、債務者から何らかの具体的根拠は示されていない。
 債務者は、債権者の勤務状態が不良であると主張するが、債権者の無断欠勤等を一応認めるに足りる疎明はなく、債務者が本件解雇前に債権者に対して勤務状態を改善するように注意、命令したような形跡は本件全疎明資料によっても認められない。債務者は、債権者の出勤状態について詳細な疎明資料を提出しており、なるほど、債権者の勤務状態には必ずしも問題がなくはないようにみえるが、これらについては債権者も逐一反論、疎明しているところであり、本件疎明資料によると、そもそも債務者においては外勤が多いことや三〇分以内の超過勤務に対する時間外賃金支払をしないこととの関係で始業時三〇分程度は遅刻としない扱いだったというのであり、その都度注意等がなされた形跡がまったくない本件にあっては本件疎明資料に表れている勤務状態を前記5の事実と併せただけでは、その余の点について判断するまでもなく、債務者の秩序維持の観点から債権者を解雇しなければならないと認めるに十分であるとはいいがたい。