全 情 報

ID番号 05865
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 岡山電気軌道(バス運転者)事件
争点
事案概要  常務取締役観光部長には、単独で退職の承認をする権限は与えられないとして、退職の意思表示の撤回が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 退職 / 退職願 / 退職願いの撤回
裁判年月日 1991年11月19日
裁判所名 岡山地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 8 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例613号70頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-退職願-退職願いの撤回〕
 原告が昭和六二年一二月二日作成した本件退職願は、常務宛でなく社長宛となっていること、被告には会社組織上労務部が置かれており、その「業務分掌規程」には明文をもって、従業員の求人、採用、任免等に関する事項は労務部の分掌とされていること、労務部にはA部長以下の職員が配置されており、その統括役員はB常務ではなくC常務取締役であること、右分掌規程には、分掌の運用に当たってはその限界を厳格に維持し、業務の重複および間隙又は越権を生ぜしめてはならない旨規定していること(第三条)、被告は業務分掌規程と職務権限規程とは別個であると主張しながら、職務権限規程について明文で定めたものは存在しないこと、また、権限委譲についても明文で定めたものはないこと、通常の退職願承認の手続は、社長宛の退職届が所属長に提出され、所属の部長、担当常務に渡され、営業所長が退職届を受理すると判断のうえ、営業課の稟議簿に記録し、営業課長、営業所長、自動車部担当常務と順次閲覧の後、本社労務部にまわされ担当の常務取締役、専務取締役によって決済され承認していたことが認められ、これによると結局、C常務には同人が統括する観光部、営業部、整備部に所属する従業員の任免に関する人事権が分掌されていたとは解されない。しかも、原告が本件退職願を提出するに至った経過に照らしてみれば、C常務が専務取締役Dとの協議を経ることなく単独で即時退職承認の可否を決し、その意思表示をなしえたということはできない。
 なお、C常務が本件退職願を原告から受け取ったとき、ただちに退職承認の意思表示をした旨の主張については、(証拠略)に照らして採用することはできず、他にこの点に関して被告主張事実を認めるに足りる証拠はない。
 五 以上のとおり本件退職願は、昭和六二年一二月九日の撤回届の提出により有効に撤回されたものというべきであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告は被告の従業員たる地位を有するということができる。