全 情 報

ID番号 05905
事件名 地位保全仮処分申立事件
いわゆる事件名 奥野技術研究所事件
争点
事案概要  営業技術職から工事技術職への配転命令の指示違反等を理由とする懲戒解雇につき、権利濫用にあたらず有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1992年3月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成3年 (ヨ) 2256 
裁判結果 却下
出典 労働判例610号44頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 右一応認定にかかる債権者の2の行為(平成三年六月一二日の行為については、業務命令拒否の態度を表明した点において職場秩序を乱したことは否定できないから、情状は別として懲戒事由該当性が認められる。)は、債務者主張のとおり、就業規則四九条四号の懲戒事由に該当するものである。
 三 債権者は、【1】本件懲戒解雇は債務者が第一次解雇の撤回を余儀なくされたことに対する報復措置であること、【2】債務者は平成三年五月に債権者を営業技術職から工事作業職へ配置転換したが、右配置転換は債権者の職種を営業技術職とした雇用契約に違反するうえ、債権者が腰痛症及び高血圧症の治療中で体調不十分であることを知りながら行った点において不当な配置転換であり、右事実によれば債務者が債権者を退職に追い込む目的を有していたことが明らかであるから本件懲戒解雇は解雇権の濫用に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件懲戒解雇の事由は前記二2で一応認定したとおりであるから、同解雇が第一次解雇の撤回を余儀なくされたことに対する報復措置であると認めることはできない。また、雇用契約上、債権者の職種が営業技術に限定されていたと認めるに足りる疎明はないし、右配置転換当時の債権者の腰痛症及び高血圧症の症状の程度は不明であって工事作業職に従事することが困難であったと認めることはできないから、右配置転換を不当であるということはできず、債務者が債権者を退職に追い込む目的を有していたとは認められない。そして、懲戒事由とされた前記2の各行為を総合すると債権者は債務者の職場秩序を著しく乱したものであるといえること、債権者の入社以来の勤務状況が前記二1認定のとおりであったこと等の事実に照らすと、本件懲戒解雇が解雇権の濫用に当たるということはできない。