全 情 報

ID番号 05922
事件名 給料請求事件
いわゆる事件名 都理夢事件
争点
事案概要  半年単位の歩合報酬契約による場合、一か月段階で退職した労働者が、歩合報酬を請求したことにつき、半年単位の合意はなかったとして右請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継
裁判年月日 1992年5月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 4424 
裁判結果 認容
出典 労働判例612号62頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約の承継〕
 一 争点1(一〇〇〇万円までの分に対する歩合報酬金の請求)について
 (証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、平成二年七月四日に被告との間で原告の給料(歩合報酬)について合意した際、被告代表者A(以下「被告代表者」という。)に対し、半期の営業実績一〇〇〇万円の分についてはその三〇パーセントにあたる三〇〇万円を歩合報酬とし、これを六等分して月々五〇万円を基本給名目で支給すること、半期の営業実績が一〇〇〇万円を割った場合には不足分に対応する仮払い支給分を被告に返還することを提案し、被告代表者がこれを了承したことが認められる。
 被告代表者は、原告から右のような提案を受けたが、被告としては月々五〇万円は固定給として支給するものであり、営業実績があがらなくともこれを返還してもらうつもりはないと答えた旨供述する。しかしながら、原告本人尋問及び被告代表者本人尋問の結果を総合すると、原告は平成三年一月被告代表者に対し退職に伴う歩合報酬の清算を求めた際、営業実績一〇〇〇万円の分に対してはその三〇パーセントの歩合報酬を請求したこと、右請求は口頭及び計算方法を示した書面により行われたこと、右請求に対し被告代表者が固定給であるから歩合報酬として計算するのはおかしいとの異議を述べたことはないことが認められ、この事実に照らすと右供述を採用することはできない。
 そうすると、原告の歩合報酬については原告主張どおりの合意が成立したものというべきであるところ、原告の平成三年上期の営業実績が五九三一万五六六〇円であったことは前記第二の一のとおりであるから、原告の平成三年上期の歩合報酬額は、【1】内金一〇〇〇万円の三〇パーセントの三〇〇万円、【2】内金四九三一万五六六〇円の三五パーセントの一七二六万〇四八一円の合計金二〇二六万〇四八一円となる。
 二 争点2(半期六か月間の継続勤務が歩合報酬発生の条件とされていたか)について
 被告代表者は、原告が今後も継続して勤務することを期待して高率の歩合報酬を支給することにしたものであり、少なくとも原告が半期六か月間を継続して勤務することを右率による歩合報酬発生の条件としていた旨供述する。しかしながら、右供述は、このような条件を原告に説明したかどうかという肝心の点が曖昧であり、原告本人が歩合報酬の発生を右のような条件にかからしめるとの話はなかった旨供述していることに照らすと、右被告代表者本人の供述によっては原被告間で歩合報酬の発生を右条件にかからしめるとの合意があったと認めることはできず、他に右合意の存在を認めるに足りる証拠はない。したがって、被告は原告が半期の中途で退職したことを理由として原告の歩合報酬の支払を拒むことはできないというべきである。