全 情 報

ID番号 05944
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 タカラ事件
争点
事案概要  業務外の交通事故による休職につき、休職期間満了時においても休職事由が消滅していないものとしての退職扱いが正当とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 休職の終了・満了
休職 / 傷病休職
裁判年月日 1992年9月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 16200 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1473号3頁/労働判例616号79頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-休職の終了・満了〕
〔休職-傷病休職〕
 休職期間満了による退職
 (一) 原告は、休職期間満了の二週間前に被告会社に復職届を郵送したが、その間の休職発令時に比べて身体の機能の回復ないし回復の兆候が認められたわけではなく、休職期間満了時まで、依然として開発の業務に従事することができない状態が続き、また、原告が被告会社に対して自宅作業の指示・打ち合せを求めて自宅勤務の復活を希望するなどの復職を前提とする話し合いを一切求めておらず、専ら被告会社の原告に対する過去の処遇が悪かったこと、交通事故の事後処理を有利にするための被告会社の協力が足りないこと、原告の退職についての金銭的解決に被告会社の誠意がないこと等を攻撃していたにすぎないのであるから、原告には就業規則四六条三号所定の「休職期間が満了したときに休職事由が消滅しないとき」の事由があるものというべきである。
 (二) ところで原告は、休職期間満了による本件退職通知は原告の復職の可能性、意思について審査することなく一方的にされた解雇であって、解雇権濫用であると主張するので判断する。
 就業規則(書証略)によれば、被告会社においては、休職者から休職期間中に休職の事由が消滅したとして復職の届出がされた場合には休職の事由が消滅したと認められたときに復職を命ずる旨(四三条一、二号)、情状により休職期間を延長し又は休職期間中に復職を命ずることがある旨(四一条)が定められており、また、休職中の者が、休職期間が満了し、また休職事由が消滅しても、所定の復職もしくは退職の手続きをとらないときは、会社は従業員を解雇することがある旨(四九条六号)が定められていることが認められる。これらの規定からすれば、被告会社の原告に対する本件休職命令に基づく休職期間満了による退職通知の性質は、休職期間の満了によって当然に原告が退職になったという事実の確認にすぎないものではないが、原告について休職事由が消滅したとは認めずに退職扱いにする旨の意思表示であるということができる。
 本件退職通知をするに際して被告会社が専門医師による原告の診断を求めようとしたことは窺われないが、原告においても復職申出の趣旨に沿う休職事由の消滅の事実を明らかにしたことは窺われない。のみならず、本件退職通知は、前記認定のとおり一年八か月以上の長期間原告に就労の形跡・就労の意思が認められない状況のもとでされたことに鑑みると、被告会社において専門医師による原告の診断を求めなかったからといって、これが退職通知の効力に影響を及ぼすものではないというべきであり、本件退職通知が権利濫用に当たるということはできない。
 (三) そうすると、原告は、本件退職通知当時、就業規則四六条三号所定の「休職期間が満了したときに休職事由が消滅しないとき」に当たるものということができる。