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ID番号 06006
事件名 離職票記載内容変更命令等請求事件
いわゆる事件名 イースタンエアポートモータース事件
争点
事案概要  ハイヤー運行を業とする会社に雇用されていた労働者が退職した後、「離職票」の記載の内容が不当であるとしてその削除等を求めて争った事例。
参照法条 労働基準法22条
体系項目 労働契約(民事) / 使用証明とブラックリスト
裁判年月日 1992年5月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 811 
裁判結果 棄却
出典 労働判例615号38頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-使用証明とブラックリスト〕
 本件離職票の記載中平成二年八月一七日の欠勤の点については、前記のとおり、原告は、同日出社したものの、被告の業務の性質上当然必要なものといえる健康状態自己申告書の提出を求められたのにこれをあくまで拒み、同日付けで退職する旨申し出た上、当日は健康状態自己申告書の提出なしで乗務させるように要求して被告に拒否され、退社してしまったものであるから、同日の勤務が欠勤とされることはやむを得ないことであり、その点の本件離職票の記載に事実との齟齬はない。
 2 本件離職票の記載中同月一八日の欠勤の点については、原告は、右のような経過で、前日、健康状態自己申告書の提出をあくまで拒否したまま就労を希望してこれを拒否されたもので、さらに被告会社を退職することを前提としていたものであり、同日を有給休暇とするなどの特段の請求も合意もなされないまま就業していない以上、同日の勤務が欠勤とされることは当然であり、その点の本件離職票の記載に事実との齟齬はない。
 3 本件離職票の記載中同年五月七日から同年六月五日までの間の欠勤の点については、前記のとおり、原告が主張する捻挫あるいは手足の痺れないしは左踵部痛と本件労災事故との因果関係を認めるに足りる証拠は何もなく、かえってその立証が不可能であることは原告の自認するところである。したがって、この期間の欠勤が本件労災事故による休業であるとは認められないために欠勤として扱われたのであるから、その点の本件離職票の記載に事実との齟齬はない。〔中略〕
 原告の請求中金員の支払を求める点も、請求の原因自体に不明確な点が多い。前記のようにそれを善解してみても、請求を是認し得るだけの法的根拠は見い出すことができない。
 1 迷惑料四五〇万円の請求については、被告に不法行為があるとの主張のように解されるが、同年五月七日から同年六月五日までの間の欠勤について労災扱いとされなかったのは右欠勤と本件労災事故との因果関係の証明がないからであり、また、健康保険給付等の支払が遅延したのは、原告が右因果関係の証明ができないのにできると主張し続けたためであって、それらが原告に不利益であるとしても、いずれも原告自身の責に帰すべきものにすぎず、被告の違法行為とみる余地はない。被告が原告に健康状態自己申告書の提出を求めたことは、人命を預かる公共輸送機関として当然のことで、何ら違法なものとはいえない。本件離職票の記載に事実と齟齬する点のないことは前示のとおりである。原告は、被告から本件離職票を交付された時期が遅かったことで職業訓練校に通学する機会を失ったかのようにも供述するが、原告が被告に対して、退職後に職業訓練を受けて資格を取得することが退職後の人生設計の上で重要だと説明したり、離職票の交付を早くしてほしいと要求したり、被告においてことさらにこれを遅らせたりしたことを認めるに足りる証拠はなく、また、本件離職票の交付時期のいかんが原告供述の資格の取得の可否自体に影響を及ぼすべき特段の事情を認めるに足りる証拠もない。その余の主張についても、これを被告の原告に対する不法行為とみるに足りる事情は何も見当たらない。
 他にも原告の右請求を理由あらしめる事情は本件全証拠によっても認められず、被告に不法行為責任が生ずると解すべき余地はない。