全 情 報

ID番号 06130
事件名 地位保全金員支払仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 茨木消費者クラブ事件
争点
事案概要  営業譲渡を理由とする解雇につき、清算までは労働契約は継続するとし、また営業譲渡がなされたかどうかも疑わしいとし、本件解雇は不当労働行為にあたり、解雇権濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
労働組合法7条1項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 営業譲渡
解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1993年3月22日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成4年 (ヨ) 1067 
平成4年 (ヨ) 1117 
裁判結果 一部認容
出典 労経速報1490号21頁/労働判例628号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 右認定の債権者らの組合結成から解雇されるに至る経過等の事情からすると、債務者が、債権者らの結成した組合を嫌悪し、A消費者クラブからこれを排除しようと企図し、平成四年一月末日ころから、組合の中核である債権者ら三名を解雇することを決意し、同月六日に専ら組合対策の任にあたらせるため採用したB専務の指導の下に、債権者伊藤らに対して警告書や要望書を交付し、あるいは組合員である配送員の解雇に備えて軽貨急配なる業者に配送員の派遣要請をするなどの準備を整えたうえで、債権者ら三名を解雇したものであることが明らかである。そうだとすると債権者ら三名に対してした解雇は不当労働行為意思によるものであると認められるから、債権者Cにおいて前記のような事情があるとしても、同人に対する本件解雇は解雇権の濫用に該当し、無効であるといわざるを得ない。
〔労働契約-労働契約の承継-営業譲渡〕
 債務者主張のような個人経営にかかる事業体が営業譲渡され、その企業主体に変更があつた場合、当然に旧企業(個人経営の事業体)と従業員との労働契約関係が新企業に承継されるものではなく、これが承継されるとするためには少なくとも旧企業と新企業との間で労働契約関係の承継についての包括的な合意がなされる必要があると解すべきであり、この合意が存しないときには当該労働契約関係は承継されず、依然として旧企業の主体である個人との間に残存することになるということになる。後記のとおり、債務者とA消費者クラブとの間の営業譲渡契約書が実体に符合するものとした場合、この営業譲渡契約において、従業員はA消費者クラブを退職させたうえ必要な範囲でDが改めて採用するとされており、そうだとすると債権者らについては、当然のこととしてこの手続が採られていないことが明らかである。したがって、債権者らに対する本件各解雇が無効である限り、その労働契約(雇用契約)関係は依然として債務者との間に存在することになる。債務者は事業を解散して閉鎖した旨主張するが、仮に解散しているとしても、これによって従業員との間の雇用契約関係が当然に消滅するものではなく、これが清算されるまでは残存することになるというべきであり、債務者の主張はこの点において失当である。