全 情 報

ID番号 06161
事件名 解雇無効による地位保全仮処分申立事件
いわゆる事件名 ソニー長崎事件
争点
事案概要  当初六か月、その後は一年の期間を定めた労働契約が更新された本件について、期間満了による雇止めに解雇の法理が類推適用されるが、本件雇止めには解雇権濫用、信義則違反はないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法21条
民法1条2項
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1993年8月20日
裁判所名 長崎地大村支
裁判形式 決定
事件番号 平成4年 (ヨ) 26 
裁判結果 却下
出典 労経速報1505号3頁/労働判例638号44頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 1 本件雇用契約関係が、五回にわたり反復更新されたこと、しかも、季節的労務や特定物の制作のような臨時的作業のために雇用されているのではなく、有期社員について雇用関係のある程度の継続が期待されていることは前説示とおりであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めにするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了における使用者と労働者の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係になるものと解せられるが、しかし、有期社員の雇用関係が比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している、本件における正社員を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである(最判昭和六一年一二月四日判例時報一二二一号一三四頁)。〔中略〕
 前説示のとおり、債務者が雇用調整にあたって、有期社員について、出来る限り、自然減にまかせ、雇止めを二名に止めている状況については、有期社員の期間満了にあたって、何名の、あるいはどの社員を雇止めにするかは、企業の経営判断に基づく裁量的判断であることから、その裁量の限界を逸脱する、あるいは裁量を濫用するといった事情について疎明がない以上、右の状況をもって不当というのは当たらず、本件雇止めをもって、整理解雇であると認めるに足りる疎明もない。
 八 以上検討してきたところによると、債務者が債権者について再雇用を不可と判断するに至った過程に、解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為に該当する事実は認められず、債務者会社がその有期雇用者就業規則第二七条【4】にいう「事業の縮小または業務の都合によって剰員となったとき。」に該当すると判断し、債権者上司の一応の資料に基づく判断に加え、債権者上司や同僚社員からの聞き取り調査に基づいて、再雇用を不可とした判断に、その裁量の限界を逸脱、あるいは裁量を濫用したとの事情はなく、再雇用拒否は正当である。