全 情 報

ID番号 06170
事件名 土地建物立入禁止仮処分命令申立/地位保全・賃金仮払い仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 村上学園事件
争点
事案概要  高等学校教頭が修学旅行の引率団長としてホテルに待機すべき時間帯にゴルフをしたことを理由に懲戒解雇された場合につき、右処分は相当ではないとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1993年9月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成5年 (ヨ) 1143 
平成5年 (ヨ) 1159 
裁判結果 認容
出典 労経速報1511号9頁/労働判例642号21頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 債務者は、昭和三三年に債権者学園に教諭として雇用され、昭和五八年にA高校の教頭となり、本件懲戒解雇処分に至るまで、大過なく勤務している(債務者に、右ゴルフ・プレー以外に非違行為があったとは、債権者によっても、なんら主張されておらず、その疎明もない)こと等の事実を勘案すると、右ゴルフ・プレーという職務違反行為により、戒告、減給、あるいは場合によって停職処分にするは格別、右ゴルフ・プレーの一事をもって、債務者を懲戒解雇処分にするのは相当であるとはいえない。
 また、債務者の債権者に対する虚偽報告の点も、教職(とくに教頭)にある身としては、あるまじき行為ではあるが、もともとの職務違反行為は、右ゴルフ・プレーという懲戒解雇処分にするのは相当ではない行為であること、また、少しでも自己の身を庇おうとするのが人間の情であることに鑑みれば、右虚偽報告の点を殊更、重大視して、債務者を懲戒解雇処分にするのも相当でないというべきである(債権者は、ゴルフ・プレーの費用を業者負担とさせた点も問題とするが、(証拠略)によれば、ゴルフ・プレー費用は、二二〇五九円であり、また、債務者によれば、ホテルに帰って、ゴルフ費用の精算をホテルに申し出たところ、「社長のメンバーコースでもあり、格安にしてもっているので、ご心配は無用です。」とホテル側に言われ、厚意に甘えたと弁解しており、右弁解どおりとすると、債務者の右行為が懲戒解雇にしなければならないほど悪質であるとまではいえない。)。
 以上のとおりであるから、本件懲戒解雇処分が債務者主張のように、債権者学園の前理事長が私怨をはらすために行われたものであるかどうかにつき判断するまでもなく、本件事案の下では、債権者の債務者に対する懲戒処分は重きに失し相当であるとは認められないので、本件懲戒解雇は無効であるというべきである。