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ID番号 06181
事件名 療養補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 大分労基署長事件
争点
事案概要  出張中の宿泊先で夕食中に飲酒した後、階段から転落し、死亡した事故につき、出張先の宿泊施設内での慰労と懇親のための飲食は宿泊に通常隨伴する行為であり、業務起因性が認められるとされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 出張中
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 会社行事(宴会、運動会、棟上げ式等)
裁判年月日 1993年4月28日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (行コ) 13 
裁判結果 破棄自判(確定)
出典 タイムズ832号110頁/訟務月報40巻2号384頁/労働判例648号82頁
審級関係 一審/大分地/平 4. 3.13/昭和63年(行ウ)2号
評釈論文 西村健一郎・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕116~117頁1995年5月/畠中信夫・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕132~133頁
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-出張中〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-会社行事(宴会、運動会、棟上げ式等)〕
 本件全証拠を検討しても、本件事故が発生した時点において、Aがなんらかの恣意的行為に及んでいたことを示す証拠はなく、前記認定の、午後九時五分頃、入浴に赴くBに声をかけた際の状況や、本件事故後、Aの床を三方から囲むような位置関係で就寝していた他の三名を起こすような言動をすることもなく、床に入っていることなどの事実関係に照らすと、Aは本件事故当時、他の三名が寝入るのを待って自らも就寝すべく、暫時宿泊室の外で時間を過ごし、その間二階をぶらつき、トイレに行ったりなどした後、宿泊室に戻ろうとして、いったん本件階段を三階へと昇ったが、二階のトイレのサンダルを履いていることに気がついて、二階へ降りようとした際に、足を踏み外して転倒し、本件事故に至ったものと推測するのがほぼ事実に符合するのではないかと考えられ、本件事故は、Aが業務とまったく関連のない私的行為や恣意的行為ないしは業務遂行から逸脱した行為によって自ら招来した事故であるとして、業務起因性を否定すべき事実関係はないというべきである。
 3 そうすると、本件事故については、それが宿泊を伴う業務遂行に随伴ないし関連して発生したものであることが肯認されるところ、業務起因性を否定するに足る事実関係は存しないもので、Aの死亡は、労災法上の業務上の事由による死亡にあたるというべきであり、Aの死亡が業務上の事由による死亡に該当しないとして、被控訴人が昭和五九年三月三一日付でした、労災法に基づく療養補償給付及び遺族補償給付並びに葬祭料を支給しない旨の本件処分の取消を求める控訴人の請求は、理由があるから認容すべきである。