全 情 報

ID番号 06229
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 京橋郵便局事件
争点
事案概要  京橋郵便局の職員が平成二年一一月一二日(即位の礼の日)の年休の時季指定をしたのに対して、使用者が最低配置人員を欠くとして時季変更権を行使したが、当日欠勤したため賃金カットされ、右カット分の賃金等を請求した事例。
参照法条 労働基準法39条4項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
裁判年月日 1993年12月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (行ウ) 93 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報1483号135頁/労経速報1517号12頁/労働判例644号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-時季変更権〕
 労働者の有する年次有給休暇の権利は、労基法三九条一、二項の要件を充足する限り、法律上当然に発生するものであり、労働者は、その請求により休暇の時季を指定することができるところ、同条四項但書(勤務時間規程六八条但書)にいう「事業(業務)の正常な運営を妨げる」場合に当たるかどうかは、事業の規模、年休請求権者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代替勤務者の配置の難易等諸般の事情を考慮して年休制度の趣旨に反しないよう合理的に決定すべきものである。〔中略〕
 原告の勤務変更申出に対する平成二年一一月七日のA上席課長代理やB課長らの対応、及び同月一〇日のC副課長らの対応は、終始、本件当日の勤務変更は凍結されているからこれを認めることができないとして、原告の右申出を一切受け付けない頑なものであったと認められる。運用方針二八条、一九条の規定によれば、勤務変更の許否に当たり、職員側の事情も可能な限りしん酌するよう要請しており、申出に当り、書面等厳格な方式を要求しているものでもなく、第一郵便課において、本件と直近の日曜日に引き続く祝日である平成二年九月二四日に、DチームのEが一六勤(宿)から祝休へ、FチームのGが祝休から一六勤(宿)へと勤務変更が認められており、職員側の事情・申出による勤務変更が少なからず行われ、相対の勤務変更者間の合意がある限り、できるだけこれを認める方向で柔軟に対応していたことが窺われる。それ故、勤務変更を申し出る職員があくまで代替要員の氏名を告げることを拒絶するであろうと予測されるような場合は別として(本件がそのような場合であったとは認められない)、勤務変更を申し出る方法が第一郵便課の実態と異なり代替要員の存在のみを告げるだけでその氏名を開示しないでされたからといって、課長らにおいて右勤務変更申出者に対し代替職員の氏名を確認することは一挙手一投足で足りるのであるから、課長らにおいて右代替職員の氏名を尋ねる等した上で、その代替職員に勤務変更した場合、業務に支障をきたすことがあるかどうか検討すべきであると考えられる。にもかかわらず、C副課長らは、右のような頑な対応に終始したのであるから、原告は代替職員の氏名を告げる機会も与えられなかったものというべきであって、B課長らは、原告の年休の時季指定に対し、代替勤務者確保のために通常なすべき配慮を怠ったというべきである。したがって、原告が勤務変更の申出をするに当たり代替勤務者の氏名を告げていなかったことは、実態に沿ったものとはいえず、不備があったというべきであるが、そうであるからといって、その勤務変更を認めない理由とするのは相当でない。そして、Hが代替要員として不適格であるとの事情は認められないから、B課長らが、通常なすべき配慮をしておれば、勤務割を変更し、代替要員を確保することが客観的に可能な状況にあったというべきである。
 (四) そうすると、C副課長のした本件時季変更権行使は、その要件を欠き違法なものというほかない。