全 情 報

ID番号 06247
事件名 解雇予告手当請求事件
いわゆる事件名 丸善住研事件
争点
事案概要  大工募集の広告を見て面接を受け大工として採用された者が予告期間をおかずに「解雇」されたとして解雇予告手当を請求した事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法2章
労働基準法20条1項
労働基準法114条
民法623条1項
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当請求権
裁判年月日 1994年2月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 5672 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例656号84頁
審級関係
評釈論文 橋本陽子・ジュリスト1076号155~157頁1995年10月1日
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
 右認定の事実によれば、原告と被告会社は、平成二年四月、日当一万五〇〇〇円、毎月末日締め翌月八日払いの条件で、原告が被告会社に対して大工としての労務を提供するとの内容の本件契約を締結したことが認められる。
 そして、本件契約が労働契約であるか否かについては、原告と被告会社間に実質的な使用従属関係が存在するか否かに求められると解するのが相当であるところ、右認定の事実によれば、被告会社は、原告を含む右職人らを被告会社の指揮監督下において、その提供する労務を被告会社の事業運営の機構の中に組み入れているものであり、また、原告に支払われた報酬は、もっぱら原告が提供した労務のみに対する対価とみることができ、しかも、原告は、被告会社から本件契約を解消されるまで専属的に被告会社に労務を提供し、被告会社からの報酬のみにより生計を営んでいたこと等の事情が認められるから、原告と被告会社との間には実質的な使用従属関係があったというべきであり、本件契約は労働契約と認めるのが相当である。
〔解雇-解雇予告手当-解雇予告手当請求権〕
 原告は、同年四月二五日頃、被告代表者に対し、同年五月の連休明けから仕事へ復帰したい旨を申し出たところ、被告の他の職人には仕事があったにもかかわらず、被告代表者は、原告に対し、「今仕事がないからちょっと待ってくれ。」と述べ、その後にも「仕事がない。追って連絡する。」、「他に仕事を探してはどうか。ペンキ屋を紹介しようか。」などと述べたこと、これまで被告代表者は、右のような対応をした後連絡をしないまま放置して、職人が自ら辞めるように仕向けたことがあったこと、原告は、被告代表者の右の言動をもって解雇されたものとして、同年五月の連休明け後、被告代表者に対し、「道具を持っていきます。」と言ったのに対し、被告代表者は、「あ、そう。」とのみ述べたことが認められ、この認定に反する証拠はない。
 2 右認定した事実によれば、原告からの復帰申入れに対する被告代表者の右対応は、それ自体のみを捉らえれば解雇の意思表示とはいえないとしても、右認定したその前後の諸事情をも併せ考慮すれば、使用者による労働契約解消の意思表示と認めるのが相当である。
 そうすると、被告会社が、平成四年四月下旬頃、原告に対して、労働基準法二〇条所定の解雇予告期間をおかずに原告を解雇する旨の意思表示をしたことが認められる。
 四 請求原因4(解雇予告手当)について
 被告会社が解雇予告手当を支払わないことは、当事者間に争いがないから、被告会社は原告に対して三〇日分の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払義務がある。