全 情 報

ID番号 06268
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 東栄精機事件
争点
事案概要  NC旋盤の制御機にプログラムを記憶させるのに使用するテープを自宅に持ち帰り、上司がそのテープの返還を命じたにもかかわらず従わなかったこと、その行為により納期に遅れ取引会社の信用を損ねたこと等を理由にして解雇された労働者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1994年4月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成5年 (ヨ) 2992 
裁判結果 却下
出典 労経速報1528号16頁/労働判例670号74頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 債権者は、上司からの作業引き継ぎの指示があったことを認識しながら、あえて、NC旋盤機の作動に必要なテープを自宅に持ち帰っていることからいって、債権者には、債務者会社の業務の能率を阻害し又は業務の遂行を防げても構わないとの意思があったものと推認せざるをえない。債権者は、Aから連絡を受けて同人に対し、作業をしなくてもよいと返答しているが、従来、NC旋盤機の作業が専ら債権者に委ねられていたとしても、債権者が有給休暇をとる翌二三日にNC旋盤機を作動させるか否かは、債務者会社の経営者もしくはその指示をうけた会社幹部が判断すべき事柄であるから、債権者の右発言は、誠にもって自分勝手な判断というほかない)、その後、債権者は、会社の上司からテープを返還するように指示されたにもかかわらず、破棄したと言って指示に従わなかったこと、また、債権者の右のような行為により、債務者会社は、外注依頼費用やテープ作製費用等の金銭的な損害を被ったばかりでなく、納期遅れにより、B会社との信用関係をも損ねたことの各事実が認められ、これらの事実によれば、債権者には、就業規則四三条四号(故意に業務の能率を阻害し又は業務の遂行を妨げたとき)、八号(会社の……信用を傷つけたとき)及び一一号(業務上の指示命令に違反したとき)所定の事由があることが認められるというべきである。〔中略〕
 前記のような債権者の行為は、就業規則四三条四号、八号及び一一号に該当するものであって、右行為の性質及び債務者会社に与えた損害や影響等、本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、債務者が右事由に基づき債権者を通常解雇するのもやむを得ないものと認められ、本件全疎明資料によっても、右解雇が解雇権の濫用であると認めるに足る疎明はない(なお、債権者の右行為は、懲戒解雇事由に相当するものであるが、債務者において、懲戒解雇事由に基づいて通常解雇することは、債権者にとって、有利になるこそすれ、不利になることはないから許容されるというべきである)。