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ID番号 06349
事件名 依願免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 大阪府教委(高槻市立玉川小学校)事件
争点
事案概要  勤務状況等から教員として勤務を続けることが好ましくないとして退職勧奨を受け依願免職処分をされた小学校教員が、退職願の提出が強制または強迫によるものであるとして右依願免職処分の取消を求めた事例。
参照法条 地方公務員法28条
体系項目 退職 / 退職願 / 退職願と強迫
裁判年月日 1993年11月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (行ウ) 14 
裁判結果 棄却
出典 労働判例650号36頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-退職願-退職願と強迫〕
 前記認定の事実を総合すると、原告は、原告の勤務状況等から、教員として勤務を続けさせることは児童にとって好ましくないと判断し、平成元年三月三一日付けの退職を期して退職勧奨を行うことを決めた市教委のA部長、B課長及びC校長から時間をかけて退職勧奨を行われ、さらに原告が本件退職願を作成・提出した同月二二日のA部長らによる退職勧奨も時間をかけて、種々の説明を加えて行われたものであって、いささか執拗なものであったということはできる。しかしながら、原告は、A部長らから種々説明を受け、原告が最終的に希望した転任も休職もできないことを説明された結果、自ら退職願を書く旨申し出て、退職願の用紙に自ら必要事項を記入して署名したうえ、同席していた妹から印鑑を借りて押捺し、その場でA部長らに提出したこと、同月二〇日及び二二日の市教委における退職勧奨の際には、原告の母親及び妹が同席したこと、二二日にA部長らが原告を粘り強く説得している間、終始同席していた母親及び妹も原告に対し退職を勧めていたこと、A部長らが、原告の帰宅を妨げるために脅迫的言動をとったり、有形力を行使したものとは認められず、このような親族二名の同席及びその態度を考え併せると、原告が退職願を書かなければ帰れないような客観的な状況にあったとはいえないこと、前記認定の原告の勤務状況によれば、A部長らが、原告に教員として勤務を続けさせることは児童にとって望ましくないので退職勧奨をすべきであるとした判断に不合理な点は認められず、原告の母親と妹さえ右退職勧奨をやむを得ないものと考えていたことがうかがわれること、原告は、その本人尋問中において、本件退職願を提出した動機について、学期末ないし学年末の仕事を終わらせるためには退職願を書いて帰ったほうがいいと考えたからであるなどと供述するが、退職願を書いてしまえば勤務の継続はなくなり、学期末の仕事を性急に行う必要もなくなるのであるから、このような供述自体不合理であるといわざるを得ないこと、原告は、本件退職願を提出した翌日にC校長から退職の意思の確認を受けた際にも、これを肯定する態度をとるとともに、その後行われた校内研究会の席上でC校長から原告が退職することを紹介された際にも何の異議を申し出ることもなかったし、同月三一日には、依願免職処分の辞令を何ら異議を申し出ることなく受けていること、さらに、後に述べるように、原告は、本件退職願提出後本件依願免職処分がなされるまでの間に、本件退職願を撤回していないうえ、本件依願免職処分後、同処分が適法になされたことを前提に行われた退職者に対する各種手続を滞りなく行い、異議を述べなかったこと、以上の事実を認めることができ、右の事実を総合勘案すると、原告は、A部長らから種々の説明を交えて退職勧奨を受けた結果、これを受け入れ自らの意思で本件退職願を作成・提出したものであって、それが強迫又は強制によってなされたものとは到底認めることができず、ほかに本件退職願が強迫又は強制によって作成・提出されたことを認めるに足る証拠はない。
 よって、本件退職願の提出が強制又は強迫によってなされたものであるという原告の主張は理由がない。