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ID番号 06389
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 スター芸能企画事件
争点
事案概要  芸能プロダクションを経営する者が、歌手志願者と芸能出演契約を締結していたにもかかわらず、当該歌手志願者が芸能出演すべき義務を怠ったとして契約を解除するとともに、債務不履行に基づき損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法2章
労働基準法14条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 演奏楽団員
労働契約(民事) / 労働契約の期間
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1994年9月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 1930 
裁判結果 一部認容,一部棄却(確定)
出典 時報1536号61頁/タイムズ883号193頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-演奏楽団員〕
〔労働契約-労働契約の期間〕
 本件契約の他の条項には、被告は、原告の定めた時間内に原告の指定する場所において芸能出演等を行い、被告は出演時間等を原告の了解なしに変更しないこと、他社交渉をしない旨の義務を負い、原告は被告に対し、一か月二〇万円の出演料名目の金銭を支払う旨の義務を負う旨の記載があり、これによれば、被告は、原告の一方的指揮命令に従って、芸能出演等に出演し、その対価として原告から定額の賃金を受けるものというべきであるから、本件契約は、その実質において雇用契約(労働契約)にほかならず、労働基準法の適用を受けるものというべきである。そして、同法一四条によれば、一年を超える期間について雇用契約を締結することを禁止しているから、本件契約中期間を定める部分は無効となり、一年に短縮される。〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 また、本件契約が被用者である被告の責めに帰すべき事由により解除され、被告が歌手を廃業したため前記諸費用が結果的に無駄に支出された費用等になったとしても、かかる意味において前記諸費用の支出が結果的に無駄になるという事態は、仮に被告が本件契約上の義務を誠実に遂行していたとしても起こり得るのであるから(新人歌手が歌手として成功するのはそれほど容易なことではないし、それも多分に偶然的要素に左右されることは容易に推測される)、本件契約の終了原因が被告の責めに帰すべき事由による解除であったことと原告の支出した前記諸費用が無駄になったこととは相当因果関係がないというべきである。
 3 したがって、被告は原告に対し、被告を歌手として売り出すための前記諸費用の賠償義務を負うものではない。