全 情 報

ID番号 06419
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 新日本通信事件
争点
事案概要  赴任後の業務の進捗状況について具体的な報告を行わないなど就労状況は極めて不十分と言わざるを得ないが、解雇事由たる「業務能力、又は勤務成績が著しく不良」のときには該当しないとして、右を理由とする自宅待機命令及び解雇が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
労働基準法89条1項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 自宅待機命令・出勤停止命令
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1994年11月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 1788 
裁判結果 認容
出典 労経速報1556号28頁/労働判例670号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 債権者が多数回にわたり要望書類を作成して提出し、また役員等に対してもかなり執拗に処遇改善を要求したことが認められるものの、それは業務の妨害や業務の能率の阻害を目的としたものではなく、その程度、態様において業務を妨害あるいは業務の能率を阻害したとまではいえず、現に業務が妨害されたりその能率が阻害されたことを端的に疎明する資料は存在しない。
 したがって、右事実をもって、直ちに「他人に対し暴行、脅迫を加え、またはその業務を妨害したとき。」、「故意に業務の能率を阻害し、あるいは業務の遂行に非協力な行為があったとき、もしくはこれに類する行為を教唆したとき。」に該当するとはいえない。
 また、債権者が結果的に業務命令に則した報告書をまったく提出していないとしても、本件全疎明資料によるも債権者が意識的に業務命令に不服従の態度を示したものと認めるには至らず、これをもって「職務上の指示命令に正当な理由なく従わないとき。」に該当するともいえない。
 したがって、債権者に懲戒解雇事由が存在するとは認められない。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-自宅待機命令・出勤停止命令〕
〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 債務者内には債権者よりも成績評価の芳しくない従業員のいることや、債務者の役員等は、債権者の勤務成績よりもむしろ執拗な処遇改善要求に辟易し、債権者に嫌悪の情を募らせていたことが窺えるのである。
 (3) 右の事情の下では、債権者が疎外感を感じ、また自分が正当に評価されていないと感じたとしても無理からぬ面もあり、事の発端が債務者の不用意な(平成元年の)解雇通知及びその事後処理の不適切さに起因するのであるから、かかる事情をも斟酌するときは、本社着任後の債権者の就労状況は確かに極めて不十分といわざるを得ないものの、これをもって直ちに「業務能力、又は職務成績が著しく不良のとき」に該当するとまで認めるのは些か債権者に酷な感が拭えない。
 したがって、これを理由とする自宅待機命令や解雇予告は許されない。
 よって、争点2について判断するまでもなく、本件解雇予告等はいずれも無効というべきである。