全 情 報

ID番号 06445
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 伊達信用金庫事件
争点
事案概要  昭和六二年に、第二・第三土曜日の休日化に伴い、終業時間を一〇分間繰り下げる就業規則の改正には合理性があるとされた事例。
 平成元年に、全土曜日の休日化に伴い始業時間を一〇分繰り上げ、年六回以内で休日に勤務を命じることがある旨等の就業規則の改正に合理性があるとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項1号
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 労働時間・休日
裁判年月日 1995年3月27日
裁判所名 札幌地室蘭支
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 229 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 タイムズ891号120頁/労経速報1562号3頁/労働判例671号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-労働時間〕
 以上見てきたところを総合して昭和六二年変更の合理性について判断するに、右変更により原告らには一日の所定勤務時間が一〇分間延長され、その分自由時間が少なくなる不利益及び右延長された一〇分間の勤務については時間外手当が支給されない不利益が生ずるが、右延長はわずか一〇分間だけのことであるからその不利益の程度は僅少であるのに対し、原告らが受ける時間短縮、時間単価及び時間外手当単価の引上げ並びに休日増加による利益はかなり大きなものであり、後者は前者を補ってなお余りあるものと認められる。また、被告金庫の組合に対する交渉態度もそれなりに誠実であったと認められるのである。さらに、地元商工業者を主とする会員の出資により設立運営されている信用金庫の特殊性から、被告金庫が地域企業のなかで抜きんでて短い勤務時間を設定するのに躊躇するのは、立法の背景にある政策的目的にはそぐわないが、あながち理解できないことでもない。
 したがって、前述のとおり(二)、土休実施に伴い休日を増加させる法律上の義務のない被告が、なお、その政策的趣旨に沿うよう休日増の措置をとった上で、自身の経営環境、経営規模、休日増による経営負担、将来の経営見通しなどを考慮して、時間短縮の幅を圧縮して経費増大を抑制するために就業規則を変更したことは、たとえ、被告金庫の経営状態が比較的安定しているにしても、また、休日増によりそのランニングコストが年間二、三百万円程節減されたとしても、なお合理性があるというべきである。
 昭和六二年変更には合理性があると認められる。〔中略〕
 以上に見てきたところを総合して、平成元年変更の合理性について判断するに、まず、右変更により原告らの被る不利益のうち、所定勤務時間が一〇分間延長され、その分自由時間が少なくなるとともに右延長された一〇分間の勤務について時間外手当が支給されなくなる不利益は、右延長がわずか一〇分間にすぎないから僅少である。次に、指定勤務日制新設により原告らが被る不利益のうち、前記予測困難の不利益はさほど大きなものとはいえず、従前休日とされてきた日の取扱いが変わることの不利益は休日増により優に解消されている。さらに、一か月単位変形制の導入により原告らが被る不利益のうち、勤務時間の不規則性による不利益は、D、E両勤務による長時間拘束の不利益とともに判断すれば足りると解されるところ、右長時間拘束の不利益は制度内部でそれなりに緩和されており、また、予測困難の不利益はさほど大きなものとはいえないから、後記のとおり、平成元年変更により原告らが受ける時間短縮、時間単価及び時間外手当単価の引上げ並びに休日増加による原告らの利益がかなり大きなものである以上、これにより右各不利益は十分に補われているというべきである。
 そして、証拠(乙七四)によれば、被告金庫においては恒常的に残業が存することが認められるので、変形制導入による時間外手当減少の不利益は制度の運用の仕方いかんによってはかなり大きくなり得ることは前認定のとおり(3(四))であるが、原告ら労働者には被告金庫に対して一定の時間外勤務、ひいては時間外手当を要求する権利はないから、これに対する原告らの期待は事実上のものにすぎない上、前認定のとおり(四2、五1、七4(六2(一)))、平成元年変更により原告らが受ける時間短縮(年間で約二〇時間から四〇時間強)、時間単価及び時間外手当の単価引上げ(約一パーセント強から二・五パーセント前後)並びに休日増加による利益(朝夕の通勤から解放され、土曜日・日曜日の連休が増加し、長時間継続した自由時間が確保される。)は、かなり大きなものと認められるから、前者の不利益は後者の利益により十分に補われているものというべきである。
 また、被告金庫の組合に対する交渉経過もそれなりに誠実なものと認められるのである。
 したがって、前認定のとおり(二)、土休実施に伴い休日を増加させる法律上の義務のない被告が、なお、その政策的趣旨に沿うよう休日を増やす一方で、自身の経営環境、経営規模、休日増の経営負担、将来の経営見通しなどを考慮の上、時間短縮の幅を圧縮して経費増大を抑制し、勤務時間の合理的配分を行うために就業規則を変更したことは、たとえ、被告金庫の経営状態が比較的安定しているにしても、また、休日増によりそのランニングコストが年間で二、三百万円節減されたとしても、それなりに合理的というべきである。
 平成元年変更には合理性が認められる。
 以上によれば、本件就業規則の各変更は、いずれも、一方的な不利益変更であるが、変更に合理性があるから有効と解するのが相当である。