全 情 報

ID番号 06468
事件名 建物明渡請求事件、未払賃金等請求反訴事件
いわゆる事件名 コントロインスツルメント事件
争点
事案概要  会社の解散、清算手続をするための事業の閉鎖に伴う解雇につき、信義則違反あるいは権利濫用に当たらないとされた事例。
 被解雇者に対する社宅の明渡請求が認容された事例。
 退職給与規定に定める計算方法による退職金の支払いが命ぜられた事例。
 年休買上げの合意があったとされ、相当分の支払いが命ぜられた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号の2
労働基準法39条
商法404条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
年休(民事) / 年休の買上げ
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
寄宿舎・社宅(民事) / 社宅の使用関係
裁判年月日 1995年7月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 17895 
平成6年 (ワ) 5032 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労経速報1574号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
 右事実及び前記争いのない事実等によれば、本件解雇は、原告の解散、清算手続をするための事業の閉鎖を理由とするものであり、それが仮装のものであるとは到底いえないのであるから、原告の自主的判断に委ねられた正当な経済活動の範囲内に属するものというべきである。被告は、原告の業績は税務申告とは異なり、除外された利益を戻し入れて計算し直されるべきであると主張するが、真実事業を閉鎖する意思を有する以上、除外された利益の存否によって事業の閉鎖の当否の判断に影響があるかどうかは問題ではなく、事業の閉鎖が専ら被告を解雇すること自体を目的とするものであるといえない限り、本件解雇が信義則、権利濫用として無効となることはない。
〔寄宿舎・社宅-社宅の使用関係〕
 被告に対する本件解雇は有効であって、原告と被告の雇用契約は、平成三年五月二八日から三か月を経過した同年八月二八日に終了したものというべきであるから、被告は原告に対し、本件建物の明渡猶予期限後の平成五年九月一日から右明渡日の平成六年五月二九日までの賃料相当損害金合計一三一万〇八三五円及びこれに対する平成六年五月三〇日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 証拠(略)によれば、原告会社の退職給与規定には、退職金は、退職時の基本給に支給率を乗じた額とされており、同規定の別表によると、被告の退職金は、八七万七五〇〇円×{二・八+(〇・七〇〇×9/12)}=二九一万七六八七円となることが認められる。基本給をこれと異なる額で算出すべきものとする被告の主張は、前記説示のとおり採用できない。
 そうすると、原告は被告に対し、未払退職金として、金二九一万七六八七円を支払う義務がある。
〔年休-年休の買上げ〕
 証拠(略)によれば、原告は、被告との間の雇用契約において、被告の勤務が一年経過した毎に年間二〇日の年次有給休暇を与えることを約し、被告が年次有給休暇請求権を行使しなかった場合、被告の申し出により残日数分を買い上げる旨の約束をしたところ、被告は本件解雇の意思表示がされた当時、平成四年繰越残分として一八日、平成五年分として二〇日の年次有給休暇を有していたが、被告が本件反訴請求として右買上げを主張した時点では、平成四年繰越残分は平成五年一二月末日をもって消滅していたのであるから、未行使の年次有給休暇残日数は平成五年分の二〇日であったこと、原告会社内における一月当たりの標準勤務日数は二一日であることが認められる。
 右事実によれば、未行使の年次有給休暇残日数に対する買上金は、計算上、八七万七五〇〇円×20/21=八三万五七一四円となる。
 そうすると、原告は被告に対し、年次有給休暇買上金として、金八三万五七一四円を支払う義務がある。